二本の大銀杏のたわわな緑が一服の清涼剤となり、参拝者の心を癒してくれる夏の清荒神清澄寺境内。エントランスの水盤に沿って史料館の入口をはいると、清荒神清澄寺と関わりが深い、法具なども制作した3名の金工家による日本の伝統技術の粋を集めた作品が展示されています。
9月28日まで開催されている「金工の匠」展では、平成5年の伊勢神宮第六十一回式年遷宮、平成25年の第六十二回式年遷宮に御神宝を制作した金工家の萩井一司氏の作品をはじめ、梵鐘・茶の湯釜の重要無形文化財保持者であった香取正彦氏と角谷一圭氏の個性豊かな作品が展示されています。
展示室の北面には清荒神清澄寺の春季大祭、百味練供養行列に光彩を放つ金色の玉幡と39世法主光謙和上の晋山記念に制作された青銅香炉が中央に配され、その左右では赤銅に桐と唐草模様が金色で施された建水、菱形がモダンな南鐐の象嵌水指、木の葉模様が美しい銀の花瓶など萩井一司氏の作品を観ることができます(右上写真)。萩井氏は39歳のときに先代法主光聰和上の知遇を得て、天堂改築落成、本堂解体修理落成の際に法具などを制作。金工分野の希少な技法を今日に伝える後継者として、72歳の現在も古の美と技の再現に取り組んでおられます。
南面には、本堂の大屋根に輝く宝珠形露盤を考案した香取正彦氏の「喚鐘」とその下絵、鳩耳が個性的な赤銅の花瓶、また天堂に祀られている「三辨宝珠宝鏡」を制作した角谷一圭氏の蓬莱図が浮き出た和銑の釜など華やかで見ごたえがある作品が並んでいます。
キャビネット内には銀杏をあしらった銀の蓋置や福を表す蝙蝠を透かし文にした茶托、龍文文鎮などが展示され、一つひとつゆっくり味わいたい作品ばかりです。
清荒神駅から徒歩圏内にあって、緑豊かな清荒神清澄寺の史料館で匠の技をゆっくり味わってみませんか。