4月1日~6月28日まで開催されている史料館の企画展は「水と親しむ」。 清荒神は火の神様として親しまれていますが、護法堂の右奥には「龍王堂」があり、「善女龍王」という水神様が祀られ、荒神川の渓流には不動明王が岩壁に祀られている龍王滝があります。また、水は古来より海、川、滝と形を変えて芸術のテーマとなり、多くの名作が生み出されており、その一端に触れることができる展示となっています。
古代インドでは宇宙を構成している要素を地・水・火・風・空の五つで表し(五大思想)、密教では五輪として表現され、清荒神清澄寺には開創当時、五輪の一つで水を司る水神様を祀った「龍蔵院」というお堂が、今の史料館の位置にあったと伝えられています。
水との関わりに思いを馳せ史料館に入ると、左手壁面には滝を描く日本画家として有名な千住博筆の現代的な「ウォーターフォール」(30号)が展示され、目を引きます。独自の手法で描かれた波しぶきをあげ滝つぼに落ちる力強い滝。そして、それと対峙するように並ぶのは、初めて展示される現代中国画の巨匠と評される斉白石の静謐な「小魚都来図」、即中斎の禅語「山是山水是水」の書と水田竹圃の穏やかな春の海を描いた山水画「紅雲碧海図」の三作品。どれも味わい深い作品です。
また、絵の下には荒川豊藏の茶器「志野橋絵茶碗」「染付柳蛙絵茶碗」「赤絵網目魚文火入」「色絵柴舟図水指」「黄瀬戸手桶水指」が配され、水指は中に絵付けされた色鮮やかな波に浮かぶ柴舟を観ることができます。小林和作絵付けの永楽即全の「歸帆絵茶碗」、永楽善五郎の「掛分海松貝(みるがい)水指」、黒に白い波があしらわれた楽惺入作「波の絵黒平茶碗」、帆掛け舟があしらわれた楽宗入作「赤楽茶碗」の他、造形が楽しい、楽覚入(14代)の七種蓋置「サザエ・五徳・穂屋香炉・三つ人形・一閑人・三つ葉・かに」や豊藏の染付魚形向付など全部で18点が展示されています。
それらの芸術作品を通して、古来より水と深く関わり信仰の対象としてきた日本人の自然観を、水ぬるむ季節とともに感じてみてはいかがでしょう。