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星組 芹香 斗亜

4月15日から5月16日まで上演中、第97期初舞台生のデビューとなる宝塚大劇場星組公演は、再演の呼び声の高かったミュージカル・ショー『ノバ・ボサ・ノバ』と、フランスの劇作家マリヴォーによる名作喜劇をミュージカル化した『めぐり会いは再び』の2本立て。 新人公演主演では抜群の舞台度胸をみせた芹香斗亜、恵まれた体格を活かし、はじけるような若さで、春爛漫の舞台を盛り上げる。

宝塚の名作、ミュージカル・ショー 『ノバ・ボサ・ノバ』で若いパワーが炸裂

 4月15日から宝塚大劇場で始まる『ノバ・ボサ・ノバ』は、ショー作家・鴨川清作の代表作だ。今年、没後35年にあたり、待望の上演が決まった。舞台はブラジル、リオのカルナバル。義賊ソールと泥棒オーロが巻き起こす奇妙な事件と、燃え上がる三つの恋。ソールと美しい観光客エストレーラ、オーロと物売り女ブリーザとその婚約者マール、エストレーラの母親メールとオーロの子分ボールソ。ドラマチックな演出、ダイナミックなダンス、圧倒的な歌唱が、星組により甦る。

 「トップの柚希礼音さんが初舞台を踏まれたのが1999年に再演された『ノバ・ボサ・ノバ』です。今回、主演される柚希さんに、みんなでついていこうと必死にお稽古しました」
 『ノバ・ボサ・ノバ』は大変だよ、と上級生から聞いていたという研5の芹香斗亜さん。
 「すごく迫力があって、演じていてもワクワクする。出演できて幸せだなと感じています」

 5月3日の新人公演ではマールを演じる。「作品の中でもストーリー性のある役。自分のやるべきことをしっかりやれば、きっと役も作品も輝くはず。がんばります」

 昨秋、研4の若さで新人公演『愛と青春の旅だち』の主役に抜擢されたときは、まだ本公演で一言の台詞も喋ったことがなかった。「真ん中に立つ私が受身では、周りの人が動けない。自分から発信していかないとだめだと思い、消化できないことがあっても立ち止まらず、前に出る気持ちをもって自分からぶつかっていきました。ダンス場面でも初めて最前列の真ん中で踊らせていただきましたが、うしろの人たちのパワーを背中で感じ取り、左右に振り動かす…。自分のことだけで精一杯では、誰もついてこれないなと思いました」

 ところが同名の映画でリチャード・ギアも演じた海軍士官生役を堂々とさわやかに演じ、期待以上の成果を上げた芹香斗亜さん。真っ白な軍服が憎いほど似合っていた。実は芹香さんと軍服には早くから縁がある。日生劇場公演『KEAN』で初めて軍服を着たのが研1のとき。翌2009年の全国ツアー『再会』では登場人物の中でただ一人、軍服姿だった。「逆に、スーツはあまり着たことがないんです」というほどなのだ。

 新公主演経験は、今後の舞台に生きる。「新人公演は1度きりの舞台。本公演の自分の位置に戻ったときに、どう舞台に息づいていけるかが大事です。今回の『ノバ・ボサ・ノバ』で、自分がどれだけパワーを出せるか、愉しみたいと思います」
 芹香斗亜さんの並外れた度胸の良さは、両親譲りなのだろう。父親は元阪急ブレーブスの投手で、母親は元タカラジェンヌ。「小さい頃から周囲の方々に、あなたも受けるんでしょ、と言われるのがすごくイヤで、絶対受けませんと言い続けていたのですが、親友が海外留学すると知って、私も何かしなきゃと初めて将来のことを考えた結果、周りの方々があれだけ勧めてくださるのだから、私にもできるかもしれないと」
 あらためて、受験のコツをお聞きすると、「臆せずにぶつかること。私なんか無理だよと思っていたら、それまでです。面接って、自分のためだけに用意された時間。限られた時間でどれだけ自分を覚えてもらえるか、緊張している時間はもったいないぞと思いました」

 さて併演の『めぐり会いは再び』は18世紀フランスの劇作家マリヴォーの名作喜劇「愛と偶然との戯れ」をミュージカル化した舞台。芹香斗亜さんは王子の従者を演じる。「研5になって初めての舞台。初舞台生も一緒なので、私にできることは教えてあげたい。いただいた課題を一つ一つクリアにして次の舞台につなげていくのが今の私の抱負です」

 公演の稽古以外に、自主的に行う劇団レッスンが大好きだそうだ。素の自分が思い切り限界に挑戦できる場だという。生命あふれる春の息吹を感じさせてくれる、凛とした佇まいがまぶしい。

芹香 斗亜さん

2007年『シークレット・ハンター』で初舞台、星組に配属。10年『愛と青春の旅だち』で新人公演初主演。
兵庫県出身/愛称・キキ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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