11月8日まで上演中の宝塚大劇場星組公演は、宝塚歌劇ならではの日本物レビュー『宝塚花の踊り絵巻−秋の踊り−』と、リチャード・ギア主演で大ヒットした青春映画を世界で初めてミュージカル化した『愛と青春の旅だち』の2本立て。 愛らしいルックスから想像できない低音のセリフ回しが渋い若手男役スター・美弥るりか、新人公演主演を経てさらにパワーアップ!
宝塚歌劇の中でも日本物レビューが観られる機会はそう多くない。しかも秋の踊りとなると、次の上演はまた何年か先になるだろうという思いに急かされ、つい劇場に通うことになる。「日本物のお稽古は久しぶりで、感覚を取り戻すのに少し時間がかかりましたが、専科の松本悠里先生が出演されていますので、この機会に少しでも上達できるように、しっかり勉強したいと思います」と、星組の男役スター美弥るりかさん。
星組では2007年の『さくら』以来となる日本物レビュー『宝塚花の踊り絵巻』-秋の踊り-は、菊の宴や花紅葉などの秋の風情が白い雪景色にかわり桜咲く春爛漫を迎えるまでを格調高く華やかに綴った酒井澄夫氏の作品である。石田昌也氏の脚本・演出によるミュージカル『愛と青春の旅だち』との二本立てで、11月8日まで宝塚大劇場で上演中だ。
美弥るりかさんが、最後の新人公演『ハプスブルクの宝剣』で初主演を果たしてから、初めての大劇場公演である。「憧れの宝塚に入ってから、新人公演主演を目標にして7年間がんばってきました。挫折して落ち込んだ時期も希望を捨てずに自分を信じてきましたので、チャンスを与えていただき、すごくうれしかったです。すでに学年の長で初主演。新人公演だからといって許されるものにしたくないという思いで取り組んだので、吸収できたことは多かったと思います。その後、5月に宝塚バウホール公演『リラの壁の囚人たち』でドイツ国防軍将校ギュンター・ハイマン、8月にはバウホール公演『摩天楼狂詩曲』の準主役を役代わりで演じさせて頂くなど、ありがたいことに様々な機会を与えて頂き、夢中で過ごしました。この大劇場公演の稽古が始まり、新人公演の香盤に自分の名前がないのを確認して、ようやく卒業したことを実感しました。新人公演は、自分はこんなこともできますというものを観ていただける、ありがたい機会。でも、これからは、本公演一本でがんばらないと」
演技者として逞しさを増した美弥るりかさんが生き生きと、迷いのない決意を語る。
1982年にリチャード・ギア主演で公開され大ヒットした映画を世界で初めてミュージカル化した『愛と青春の旅だち』で美弥るりかさんが演じるのは、海軍士官学校生のイーサンだ。主役ザックのルームメイト8人中の一人。映画にはない役だが、「キャラクターが設定されていない分、自由にやっていいよと、石田先生から言われています。これまでは二枚目の男役を演じることが多かったので、今回はちょっと間抜けで可愛いげのある人物を演じることにしました」
イーサンは海軍の制服やジェット機に強い憧れを抱いて入隊する。運動能力に秀でているわけではないが、知識が豊富なイーサンは、トラブルを起こして除隊する人がいる中で、無事に卒業する。若々しく明るい青年キャラで登場する美弥るりかさんは、得意とする「ザ・男役」の典型を一時、脱ぎ捨てて、ファンを驚かせる。ところどころ、ありのままの自分を出して楽しんでいる様子だ。
「主役として広い大劇場の真ん中に立ったとき、自分を支える強いパワーが必要でした。殻を破って放った光のパワー。あのとき、いろんなことを一気に吸収できたのではないでしょうか。同じパワーをグループ芝居の中で発したら、必ずお客様の中に見てくださる方がいらっしゃると思います」
どんな役がきてもやりこなせる男役をめざしたい、と美弥るりかさんの夢は一直線だ。まずは、イーサン役でスタート。「見所の一つは、身体をはった訓練場面。実際に高い壁を登ったり、マラソンもするので、本当に息が切れます。でも“訓練が厳しい”と、何度も台詞で言うよりもきっとリアルですよね(笑)。新演出だと思います」
11月26日から12月26日まで東京宝塚劇場で上演。今年の掉尾を飾る。
2003年『花の宝塚風土記』で初舞台、星組に配属。10年『ハプスブルクの宝剣』で新人公演初主演。
茨城県出身/愛称・るりか、みやちゃん、まいまい