6月21日まで上演の宙組・宝塚大劇場公演は、イギリスの国民的英雄・ネルソン海軍提督の半生を描いたグラン・ステージ『TRAFALGAR-ネルソン、その愛と奇跡-』と、太陽をテーマにしたグランド・ショー『ファンキー・サンシャイン』の2本立て。 長身揃いの宙組の中でもスラリとした立ち姿が映える男役ホープ・鳳翔大、憧れのコスチューム物の舞台で、華やかな魅力が光っている。
6月21日まで宝塚大劇場では、宙組による久々のコスチューム物『TRAFALGAR(トラファルガー)』とショー『ファンキー・サンシャイン』を上演中だ。
宝塚歌劇にはコスチューム物というジャンルがあり、宝塚歌劇検定公式基礎ガイド本によると「洋物の歴史物で、いわゆる中世の軍服や豪華な輪っかのドレスなどの衣装を着るようなお芝居のこと」とある。対して「スーツ物」とは、宙組の前作『カサブランカ』のように男役たちがスーツをかっこよく着こなす作品のこと。
『TRAFALGAR』は、イギリスの英雄ホレイショ・ネルソン海軍提督の半生を描いたミュージカル。1805年10月、スペインのトラファルガー岬の沖でイギリスの歴史に残る海戦があった。当時、ヨーロッパ大陸を支配していたのはフランス皇帝ナポレオン。が、海上の支配権はイギリスが握っていた。ナポレオンは海上封鎖を突破して本土へ上陸すべく、フランスとスペインの連合艦隊を編成。一方、イギリスはネルソン提督の艦隊を送り出す。こうして、ナポレオン戦争における最大の海戦が始まった。
アルバート・ペリー役で出演している鳳翔大さんは、入団9年目の有望な男役スター。
「アルバートは実在の人物ではありませんが、ネルソン提督の部下の一人。軍服にロングの鬘と言えば『ベルサイユのばら』の美しい世界を想像されるでしょうが、海軍は逃げ場のない狭い船での戦いを繰り返す、勇ましい男の世界。壮大なプロローグで始まり、最後は見せ場のトラファルガー海戦でサーベルを使った大立ち回りをします。立ち回りを経験したことがない下級生もたくさん加わっているので、協力し合いながら、期待を裏切らない作品にしたいと思っています」
『ベルばら』を見て宝塚受験を決意した鳳翔大さんにとって、宝塚らしいコスチューム物は自身の憧れでもある。「『TRAFALGAR』を通して宝塚歌劇の良さをお伝えしたいし、自分自身も新人公演時代の湧き上がる情熱を思い出しています」
鳳翔大さんが新人公演で主演した『黎明の風』と『Paradise Prince』は、全く色の異なる作品だ。白洲次郎と、アメリカモダンアート界のプリンスと呼ばれるアーティストという、どちらも新人が演じるには手ごわい役柄を2008年に立て続けに演じ、新人時代卒業後に、『カサブランカ』で初の通し役バーガーを演じた。
「終演後に新人公演のお稽古をしている下級生を見るとうらやましくて、いまだに出たくなるんです。だから『カサブランカ』でバーガー役をいただいたときは、すごくうれしかったですね。歴史を調べ、地下組織の人間は何を考え、どんな行動をしていたのか、できるかぎり勉強しました。台詞があるということは、自分以外は喋らない空間があるということですから、その責任の重さに身の引き締まる思いでした」
今回はショーでも活躍場面が増えた。60年代の石原裕次郎などの懐かしい曲を歌い踊る。「あの当時の歌は歌詞もわかりやすく、感情移入しやすいですね。言っていることも粋だし、現実には照れて言えないようなキザな言葉も宝塚チック。まるでその時代を知っているかのように、楽しんでいます。『カサブランカ』のフィナーレで初めてトリオで歌わせていただき、今回、中詰めで二人で歌います。太陽がテーマの、宙組らしい、ノリのいい、弾けるようなショー。きっと楽しんでいただけると思います」
長身揃いの宙組の中でも目を引く175センチ。なおかつ細身。明朗な性格だが、ご本人いわく「舞台のことに関しては深刻に考え込み、稽古中に一度は落ち込みます」。でも立ち直りは早い。
「今でも上級生が舞台袖で台詞や歌を聞いてくださってアドバイスをくださるんですよね」
ありがたいです、と言う。
自然と周りに人が集まるような、華やかさがある人だ。
2002年『プラハの春』で初舞台、宙組に配属。08年『黎明の風』で新人公演初主演、『Paradise Prince』で新人公演主演。
兵庫県出身/愛称・だい