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2007年12月 夢乃 聖夏さん

12月15日まで上演中、2007年の掉尾を飾る宝塚大劇場星組公演は、少女漫画界の重鎮・青池保子の代表作をもとにした壮大なミュージカル『エル・アルコンー鷹ー』と、蘭の花をテーマに描くショー『レビュー・オルキスー蘭の星ー』の2本立て。現代的なスタイルとルックスが舞台で映える星組男役の若手ホープ夢乃聖夏、新人公演で主役ティリアンに挑戦。

入団7年目の夢乃聖夏さんが、最後の新人公演となる『エル・アルコンー鷹—』で主役を演じる。
少女漫画界の重鎮・青池保子氏の原作と、「ゲド戦記」の音楽を担当した寺嶋民哉氏による主題歌が話題のミュージカルだ。

「驚きました。今までもたくさん、いい役をいただいてきましたが、まさか自分が主演をさせていただけるとは。香盤を見て震えました。前回『シークレット・ハンター』のセルジオ役をさせていただいた時は、柚希礼音さんの役をさせていただくのが5回目だったこともあり、驚きよりもうれしい気持ちの方が強かったのですが、今回は野望のために冷酷な海軍士官ティリアン・パーシモンという異色の主役。いつも以上に心の奥底を探らなければ演じられません。本役の安蘭けいさんの演技を一生懸命勉強したいと思います」

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11月2日に初日の幕が上がるまでの稽古場は、本役とショーの稽古に集中する。新人公演の稽古が始まるのはその後だ。ということは、20日の新人公演本番まで2週間ちょっと。その間、毎日、本公演終了後に稽古が続けられる。「台詞は膨大な量がある上、ティリアンが話を進めないと成立しない作品。がんばるほかないです」

第87期生・夢乃聖夏さんの初舞台は2001年4月『ベルサイユのばら2001』—フェルゼンとマリー・アントワネット編—である。

「実家は佐賀県。宝塚の舞台は中学入学直前に大阪の親戚の家に遊びに来たとき初めて観ました。その頃、すでに身長が高かったので、周りから宝塚音楽学校を受けてみたらと勧められ、記念に受験したいなと。合格発表の日、母は実家に帰って私一人。携帯電話も持っていなくて公衆電話で合格を知らせました。合格は予想外だったので、親族一同びっくり。何がなんだかわけがわからないまま、気が付くと寮生活が始まっていました。音楽学校生活はソフトボール部と駅伝の部活以上に厳しかったですが、ホームシックにはかかりませんでしたね。それほど必死だったのだと思います。初舞台を観に佐賀県からたくさんの人が来てくれて、あの子が、まあ、こんなに大きくなって、と感激してくださいました」

22.6倍の難関を突破した才能は、選ばれた人のものだ。太陽のように明るい夢乃聖夏さんらしい、心あたたまるお話である。初舞台から5年後の2005年5月、夢乃聖夏さんは運命的ともいえる作品に出会った。『長崎しぐれ坂』だ。

「新人公演でさせていただいた豊後無宿のさそり役が九州弁でした。心の中に燃え滾る思いを持った役は、それまでにもいくつかさせていただきましたが、方言が使えると役の気持ちがどんどん心にしみ込み、お客様に伝わっていく。お芝居って楽しいなと思いました」

その後、夢乃聖夏さんは夢で不思議な体験をする。「最初は『龍星』で、とらわれの男をさせて頂いたとき。クサリに繋がれてもがき苦しんでいる夢を見ました。すると翌日のお稽古で、これだ、と役づくりに光が見えたんです。『ベルサイユのばら』新人公演のアンドレ役では、お稽古すればするだけ進歩はしますが、何かが足りなくて目指すところまで到達できず、苦しんでいると、本役の安蘭けいさんが遠くから、こっちへおいでよ、と手を振ってくださっている夢を見て、今行きます、と走っていくところで目が覚めたのですが、翌日の稽古で納得できるものがつかめました。今回も一瞬ですが、ティリアンの自分が高い崖の上から遠い水平線を見ている夢を見ました。台本にある独り言は、こんな場所で言っているのかなとイメージを膨らませています。決して夢に頼るわけではありませんが、夢はキーワードを暗示し、私に何かを教えようとしてくれているように思います。ティリアンのように奥が深い人物に今、挑戦させていただけることが、すごくうれしい。感謝の気持ちでいっぱいです」

夢乃聖夏さんのモットーをお聞きした。“人生は「笑」だ”「傍から見るとおかしいかもしれませんが、辛くて苦しいときこそ笑ってやる、と笑顔を絶やさずにいることが、自分の元気のもとなんです。ティリアンを演じる稽古場では、役を離れたら笑っていたい。真ん中に立つ人がずっと鋭い表情だと、いくら役づくりとわかっていても下級生はしんどくなると思うので、うまく切り替えて、最後の新人公演をみんなで楽しくがんばりたいです」

観る人を夢の世界に誘い、そのハートを幸福感でいっぱいに満たす。それが男役・夢乃聖夏の夢だ。キラキラと眩しい笑顔は、『レビュー・オルキスー蘭の星—』で堪能したい。

※次号のフェアリーインタビューは
雪組の音月桂さんの予定です。

2001年『ベルサイユのばら2001』で初舞台、星組に配属。 2006年『ベルサイユのばら』−フェルゼンとマリー・アントワネット編−新人公演でアンドレ役を熱演。 2007年『エル・アルコン−鷹−』新人公演で初主役。 佐賀県出身/愛称・ともみん
インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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