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2008年05月号 龍 真咲さん

宝塚では13年ぶりの再演となる宝塚大劇場月組公演、ミュージカル『MEANDMYGIRL』は5月5日まで上演中。明るく楽しくロマンチックなこのミュージカルのフィナーレで、第94期初舞台生を紹介する若手スター龍真咲。持ち前の華やかさで春爛漫の舞台を盛り上げる。

フィナーレで華やかに初舞台生のロケットをエスコート

ロンドンの下町ランベスに住むビルは、長年行方不明になっていた伯爵家の世継ぎ。一族の後継人による行儀教育が始まるが、ビルは身を引く恋人サリーを追ってランベスへ。軽快でハッピーなミュージカル『MEANDMYGIRL』が5月5日まで宝塚大劇場で上演中。

今春、研8になった月組の龍真咲さんにとって、特別な思い出のある舞台だ。
「1995年、天海祐希さん主演の舞台を何度も観ました。チケットが当たるというUCCの製品を買ってシールを集めては応募しました。私が宝塚を受験する4年前のことです」

小さい頃から歌を習っていた龍真咲さんは、その母親仲間の紹介で月組の『風と共に去りぬ』を観に行き、忽ち宝塚歌劇の虜になる。休演日の水曜日にも「元気をもらうために」宝塚の町を散策するほどの宝塚ファンだったが、受験システムを知ったのは受験直前である。

「バレエはゼロからのレッスン。筋肉もなく、うまく踊れなくて。環境が180度変わった予科時代はつらいこともありましたが、すべて夢を叶えるために必要なこと。不思議と楽しかったことしか覚えていません」

宝塚音楽学校へは自宅から始発の電車で通い続け、2001年4月、宙組公演『ベルサイユのばら2001』で華やかに初舞台を踏んだ。「いざ、ラインダンスの振付を受けてみると、思っていた以上にむずかしくて。何をするにも協調性が大事なことを最初に学びました。できるかなと思っても、まずやってみる。自分に期待して鍛え上げていく気持ちを、みんなが持っていると思います」

8月、東京宝塚劇場公演『大海賊』『ジャズマニア』が月組生としてのデビューである。その後、『ガイズ&ドールズ』『長い春の果てに』『With a song in myHeart』『花の宝塚風土記』『シニョールドン・ファン』『薔薇の封印』『飛鳥夕映え』『タカラヅカ絢爛Ⅱ』などに出演。05年『エリザベート』の新人公演でルドルフを演じ、気品ある姿が注目を集めた。

『JAZZYな妖精たち』『REVUEOFDREAMS』が年末の東京宝塚劇場を飾ったあと、龍真咲さんには初めての主演が待っていた。役者を育てるには芝居、スターを生み出すにはショー、と宝塚では昔から言われている。ショーに重点を置いて構成したバウ・ワークショップ『YoungBloods!!』が伸び盛りの若手を中心に各組で上演されることになり、龍真咲さんが月組の主演者に決定したのである。しかも5組の主演者の中で最下級生。年が改まった06年2月25日、ワークショップのトップバッターとしての初日が開いた。

「まだ新人公演の主役も経験していなかったので、お話をいただいたときは信じられませんでした。与えられたことをひたすら、がむしゃらにこなすだけで精一杯。でも、すごく楽しかったです。舞台は自分ひとりではできない。上級生や同期、そして下級生が一緒だったからできたことを実感し、仲間の大切さがわかりました」

同年『暁のローマ』の新人公演で準主役のブルータスを演じ、07年『パリの空よりも高く』の新公で初主演。8月の『マジシャンの憂鬱』の新公でも主演した。「本公演で主演男役の瀬奈じゅんさんを少しでも支えられるパワーを出したい、できないことを努力するだけではなく、自分の芝居を創っていきたいと思うようになりました」

経験は大きい。『パリ空』新公の膨大な台詞は、初日があくまでの夜寝る前、今日はこの章までと決めて集中して覚えた。「最後の場面までくると、さすがに気が緩むのか、覚えにくくて」と、笑って本音を話してくれる、楽しい人だ。

さて、龍真咲さんが出演中の『MEANDMYGIRL』は1937年にロンドンで生まれ、85年の再演が大ヒット。86年にはブロードウェイで上演。そのロングラン中の87年、宝塚歌劇団月組で宝塚版が初演された。今回は13年ぶりの再演。ロンドン初演から数えて71年が経つが、貴族社会を風刺しつつも悪人が一人も出ず、笑って泣くうち心が洗われる。今も多くの人に愛され続けているミュージカルなのだ。「ランベスでは下町っぽく、貴族は貴族らしく、メリハリをつけて踊っています。今回、初めてフィナーレで初舞台生を紹介し、楽しみであり責任重大。お芝居とは別の華やかさを出せるよう、がんばっています」

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ファンからの手紙は必ず、読む。「応援してくださっている方が1番よく私のことを分かってくれている。期待に応えたいですね。自分のことだけで精一杯にならず、心から楽しんで舞台をつとめたい。苦しみを経て、できた瞬間の喜びがあります。行き詰まった時は舞台以外の仕事をしている人の意見がすごく参考になる。同様にお客様には宝塚歌劇を観て元気になっていただきたい。初めての方にも楽しんでいただける、打ってつけの作品です。ぜひ、観にいらしてください」

宝塚歌劇80周年の運動会は観客として楽しんだ。90周年の運動会に出ていたことが驚き、という。100周年を担って立つべきスターの一人である。

※次号のフェアリーインタビューは
花組の真飛聖さんの予定です。

龍 真咲

2001年『ベルサイユのばら2001』で初舞台。月組に配属。06年バウホール公演『YoungBloods!!』でバウ初主演。07年『パリの空よりも高く』で新人公演初主演。
大阪府出身/愛称・まさき、まさお、まーくん

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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