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2008年04月号 青樹 泉さん

3月21日から5月5日まで、月組宝塚大劇場公演は、1937年ロンドンで初演されロングランを記録した大ヒットミュージカル『MEANDMYGIRL』。宝塚では13年ぶりの再演となるこの作品は、1930年代のロンドンを舞台に、下町に住む若者が紆余曲折の末に大富豪の伯爵家に跡継ぎとして迎えられるという明るくロマンチックな物語。宝塚バウホール開場30周年バウ・ワークショップ『ホフマン物語』で年頭に主演を果たした青樹泉、さらなる男役の魅力を開花させる。

男役10年目のスタート『MEANDMYGIRL』

3月21日から始まる宝塚大劇場公演『ME AND MY GIRL』に、ヒロイン・サリーの友人ボブ・パーキング役で青樹泉さんが出演する。小顔で173センチの長身。その恵まれたスタイルは宝塚音楽学校入学当初から変わらない。

「『ME AND MY GIRL』が再演された1995年は、まだ宝塚受験生でした。進学校の高校に入学して、すぐに進路を理系か文系かに決めなければならず、自分が本当にやりたいのはこれではないなと」

そう気づいた青樹泉さんは、中学時代に友人に誘われて観た宝塚歌劇を思い出した。まだ受験資格があるなら挑戦してみようと思い、宝塚受験スクールに片っ端から電話した。

「親には事後報告。生徒に勢いがあり、かつ初心者でもやっていけるスクールを選び、ひたすらお稽古に励みました。2次試験で初めて関西に来て、大劇場で初舞台公演を観劇し、宝塚の舞台に立ちたい気持ちが一層募りました」

毎年、春の宝塚大劇場公演で2年間の音楽学校を卒業した初舞台生たちがデビューする。恒例の口上とラインダンスは初々しい活力に溢れ、1年のうちで特に華やかな舞台だ。今春、『ME AND MY GIRL』でお披露目するのは第94期生。

「この公演から私の入団10年目がスタートします。男役が1人前になると言われる学年ですが、これで終わりではなく、これからが大切。今までやってきたことにプラスアルファ、青樹泉という男役の色を出していきたいです」

穏やかな語り口だが、確固とした信念が伝わってくる。青樹泉さんが初舞台を踏んだのは宝塚歌劇85周年の1999年である。85期生の個性豊かな同期たちは今、各組で活躍中だ。青樹泉さんの新人時代の最も大きな出来事は、なんといっても2005年、『エリザベート』の新人公演で主役トートを演じたことだろう。それまでも『シニョール ドン・ファン』のジョゼッペ、『薔薇の封印』のロバートとエミール、『飛鳥夕映え』の中臣鎌足などのキーパーソンを新人公演で演じてきた青樹泉さんだが、歴代5人目の新公トート役に決まった時は、大きな喜びと同時に、かつて味わったことのないプレッシャーが重くのしかかってきたという。

「まだ研6の終わり頃だったのですが、緊張のあまり、大劇場の新人公演は記憶がないんです。だから東京公演では新公主演という状況自体を楽しむようにしました」

その年の『JAZZYな妖精たち』で新人公演を卒業した青樹泉さんは、翌年、新たな経験をすることになる。月組の同期2人が次々と移籍したのである。

「なんだかんだ言いながら切磋琢磨して、同期がいたからがんばってこれたことがたくさんありました。一気に一人になり、月組に残った者の責任を重く受け止めました」

2006年10月、日生劇場公演『オクラホマ!』、2007年1月『パリの空よりも高く』『ファンシー・ダンス』、8月『MAHOROBA』『マジシャンの憂鬱』などでは、与えられた役をまっさらなところから創り上げていく面白さにのめり込んだ。その成果が実り、今年1月、宝塚バウホール開場30周年ワークショップ『ホフマン物語』の主演という、大きな活躍の場が与えられた。

「主役ホフマンと悪魔を下級生と役代わりで演じました。繊細な芸術家のホフマンは、激しい感情の持ち主。凡人にはついていけないような感情を表現するのが難しかったのですが、苦しみながらやっていくうちに、どんどん嵌り込み、楽しくなって。台詞が多い上に、難しいオペラの曲を40曲、しかも違うパートの歌詞も覚えたので、お稽古は過酷でしたが、良い経験をさせていただき、これから何でもやっていける自信がつきました」

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歌唱指導の先生が、ある意味で『エリザベート』よりも大変だと言ったそうだが、この10年間に再演を繰り返して耳に馴染んだ『エリザベート』の楽曲より、初めて聞くオッフェンバックの曲を覚える方が何倍も難しかった。相手娘役も役代わりだったから、合計4パターンを演じたわけだが、新人公演の稽古がそうであるように、毎日、公演をつとめながら、終演後に違う配役の稽古をしたのである。

「『がんばります!ついていきます!』と笑顔で話しかけてくれる下級生の生き生きした舞台姿と、お客様の拍手にエネルギーをもらいました。苦しんでこそいいものができると思うので、これからも明日を生きる活力を与えられる舞台をお届けできるようにがんばります」

人と接し触れ合って学ぶことはたくさんあり、人に育てていただいているという、青樹泉さんの言葉が心に残る。どこまでも前向きな姿勢と、それを貫徹できる聡明さとを併せ持った、今後が大いに楽しみなスターである。

※次号のフェアリーインタビューは
月組の龍 真咲さんの予定です。

青樹 泉

1999年『ノバ・ボサ・ノバ』で初舞台。月組に配属。2005年『エリザベート』で新人公演初主演。08年バウワークショップ『ホフマン物語』でバウホール公演初主演。
東京都出身/愛称・もりえ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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