1998年『シトラスの風』で初舞台、翌年雪組に配属。2001年『猛き黄金の国』で新人公演初主演。バウホール公演『ホップスコッチ』では立樹遥、壮一帆と共にバウ初主演を果たす。2006年バウ公演『やらずの雨』、2007年バウ公演『ノンノンシュガー!!』で主演、好評を博する。
埼玉県出身/愛称・KIMU
音月桂さんの2008年は1月1日、宝塚大劇場公演『君を愛してる—Jet`aime』『ミロワール』からスタートする。お正月にどんな音月桂さんが観られるかは1番気になるところだけれど、この、貴族とサーカスの花形スターとの恋物語—ラブ・ロマンス『君を愛してる』で音月桂さんが演じるのは、恋する主役ジョルジュの親友、フィラントという青年である。
「フィラントは私自身もうらやましいほどのお金もちのぼんぼん(笑)。周りにいつも人が集まってくるような明るい人気者であってほしいと、作・演出の木村信司先生に言われています。性格的にもこんな人になれたらいいなと思えるような人なので、演じていて気持ちがいいですね」お稽古はすごく楽しいそうだ。
『君を愛してる』は木村信司氏が初めて書き下ろしたオリジナル・ミュージカル。「オシャレ」「華やか」「爽やか」の3要素がキーワードで、「今こそ、ラブ・ロマンスを」という木村氏の祈り、永遠のテーマである愛に満ちた心温まる物語なのだ。
1998年、宙組発足公演『シトラスの風』でデビューした音月桂さんにとって、男役10年目のラストを飾る大きな舞台である。
「来春4月からは11年目が始まります。10年目の今年、いただいた役は『エリザベート』のルキーニも、『星影の人』の土方歳三も実在の人物でした。時代に生きていた人を演じる場合は、歴史を調べ、その人物に近づけるように演じますが、オリジナル作品では架空の人物をゼロから生み出せる楽しみがあります。自分の演技次第でどのようにも深められる点に、おもしろさを感じていますので、いい役に仕上げられるよう、新しい気持ちでがんばります」新年の舞台に賭ける意気込みが、弾けるような笑顔から伝わってくる。音月桂さんの明るさは、相手の胸にまっすぐストレートに飛び込んでくる。
ここで思い出の役、ルキーニについて、もう少しお聞きする。音月桂さんは宝塚音楽学校に入学する前に、初演の『エリザベート』を観ている。96年2月の雪組公演である。ルキーニを演じていたのは轟悠。当時、研11だった。「鳥肌が立つほど感動しました。忘れられなくて、ずっとルキーニを演じたいと思い続けていました」
『エリザベート』という作品に出演できるだけでも幸せ、と思い始めた頃、運命の女神が微笑んだ。雪組での再演が決まり、07年5月、音月桂さんは念願のルキーニ役を演じることに。
「本当にうれしくてうれしくて、お聞きした時思わずありがとうございます、と叫びました。初舞台を踏んでから数年間は、次はどんな役をいただけるかな、どんな振りがつくかなと、毎公演、ワクワクしていましたが、学年が上がって時間に追われるようになると、そういう新鮮な気持ちがつい薄れがちになっていたんです。そんなときにルキーニ役をいただき、初心に戻って新たな挑戦ができたことがすごくよかったです。本当に、巡り合わせに感謝です」
続いて9月には全国ツアー公演『星影の人』『Joyful!!Ⅱ』で、初めて実家のある埼玉県のホールに立った。「実家からとても近くにある会場で、両親はもちろん、市長さんや、いつも応援してくださっている地元の方々遠方の方も来てくださって、盛り上げてくださいました。1日だけでしたが、地元で公演できる幸せを噛み締めながら舞台をつとめました」
沖田総司の恋を描いた『星影の人』で音月桂さんが演じたのが、土方歳三だ。主役より貫禄が必要な役。でも音月桂さんが新人公演で初めて主演したのが2001年『猛き黄金の国』、三菱財閥の創業者・岩崎弥太郎役だった。すみれコードぎりぎり、リアルさを増した作・演出が独特の効果を生んで、男役の中でも轟悠しか演じられないと思ったほど、途轍もなく大きな役だった。あれから7年、全国各地で凛々しい男役・土方歳三の勇姿を披露した音月桂さんが、2008年元旦に、フランスはパリの麗しい紳士姿で大劇場の舞台に立つ。
雪組3番手で大活躍中の音月桂さんだが、最近、特に忙しい。その理由は水夏希、彩吹真央、音月桂、彩那音、凰稀かなめの5名により結成されたユニット「AQUA5」の活動だ。8月25日、IAAF世界陸上2007大阪「開会式」の第3部で、「AQUA5」はゴスペラーズから提供されたオリジナル楽曲“TIMETOLOVE”を披露した。9月12日にはその“BalladVersion”のレコーディングが行われて、オリジナルバージョンと共に収録されたものが11月21日に発売された。世界に発信された爽やかで魅力溢れるユニット「AQUA5」の人気が急上昇中なのだ。
「AQUA5では同性があこがれるような、カッコいい女性をイメージしています。開会式では、野外の広い芝生の上で歌って踊ったのですごく気持ちよかったです。世界陸上を見ていた海外の友人とも久しぶりに共通の話題で盛り上がり、よい機会を与えていただいたことを感謝しています」
優れた舞台人になるために感性を磨きます、と何事にも興味全開の音月桂さんを見ていると、タカラヅカの魅力が決して劇場の中だけに留まらないことを実感する。
※次号のフェアリーインタビューは雪組の沙央くらまさんの予定です。