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2007年10月 壮 一帆さん

9月21日から10月29日まで上演の宝塚大劇場花組公演は、1930年代初頭のマルセイユを舞台にしたミュージカル・ピカレスク『アデュー・マルセイユ』―マルセイユへ愛を込めて―と グランド・レビュー『ラブ・シンフォニー』。 颯爽とした二枚目ぶりに加えますます演技に磨きがかかる壮一帆、主演男役春野寿美礼のさよなら公演を盛り上げる。

一つの山を越え 花組で新たな男役を観せる

ヘイワードとモーリス。どちらも小池修一郎の作品に登場する市議会議員だ。ヘイワードは2005年11月に上演されたバウホール雪組公演『DAYTIMEHUSTLER』で壮一帆さんが演じた役。そしてモーリスは2007年9月21日から始まる宝塚大劇場花組公演『アデュー・マルセイユ』で、壮一帆さんが演じることになった役である。作品が異なるとはいえ、同じ肩書きの市議会議員を、壮一帆さんがどう演じ分けるのか、大いに気になるところである。

「どういう役づくりをしようかと、ものすごく考えましたね。ベースは同じでも、ヘイワードは現代のアメリカ人、モーリスは1930年代のフランス人。大劇場公演では出演者も役の数も多く、出番に限りがありますから、どういう役割を担い、何を表現しなければいけないか、ポイントをはずさず物語の中にきちっと存在したいと思います」

肩書きは同じでも、時代も国籍も違うモーリスを演じる楽しみは、また格別のものがあると語る壮一帆さんだが、役との巡り合わせということでは7月、梅田芸術劇場メインホール公演『源氏物語あさきゆめみし・』でも縁の深さを経験したばかりだ。この作品で壮一帆さんが演じた頭の中将役は、7年前に宝塚大劇場花組公演『源氏物語あさきゆめみし』の新人公演で演じた思い出の役だった。

「再び組替えして花組に戻る、とは思っていなかったので、まず花組で『源氏物語あさきゆめみし』が再演されて自分が出演できることがうれしかったし、その後、頭の中将役と知って、絶対にがんばろう、と初心に戻る気持ちになりました。新人公演で使用した金髪のカツラが残っていたのもうれしかった。実は新人公演でものすごく悔しい思いをしたんですよ。カツラを被り替えるのを忘れたり、大階段でつまづいてしまったり。いっぱい悔し泣きをしました。だからメインホールで約一カ月間、完璧に演じてこそリベンジができる、大きくなった壮一帆を花組のファンの方々に観ていただきたいと思い、役に集中しました」

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年月を経て再び同じ役を演じられる機会は、宝塚歌劇団では少ない。貴重な経験だった。そのあと8月1日から5日まで壮一帆ディナーショーに出演し、宝塚大劇場公演『アデュー・マルセイユ』『ラブ・シンフォニー』の稽古に入った。この公演で花組主演男役・春野寿美礼が退団する。準主役スター真飛聖に続く男役・壮一帆さんにとって、大事な節目の舞台なのだ。

「初舞台後、下級生の多感な時期を花組で過ごしました。2001年8月に雪組に移籍して、男役として足りない部分を色々勉強し、自分なりに力をつけて花組に帰ってきたと思っていますので、これからその成果を出していかなければ。なつかしさもひとしおですが、だからこそ、以前のままの自分ではなく、楽しむところは大いに楽しみながらも、お客様や組子たちに今まで何をしていたのと言われないように、しっかり自分を出して表現していきたいです」

思い返せば研6のとき、花組から雪組に移籍した壮一帆さんを待っていたのは、轟悠の雪組ラスト公演『愛燃える』の新人公演主役の座だった。中国の呉王夫差の壮絶な愛と死を、まだ主役経験のなかった壮一帆さんが大劇場の2500人の観客の前で演じ切った。

「当時はまさか主役をいただけるとは思っていませんでした。私にとって初めての雪組公演で、しかも轟さんが雪組主演男役として演じられた最後の役を初主演するのはかなりプレッシャーでしたが、とやかく考えるヒマがあったら、与えられたことをきっちりやらなきゃと、緊張している間がなかったのがよかったですね。東京公演では少し余裕ができた分、緊張してしまったのですが、今でも1番好きな役は夫差です」

鮮やかなスタートを切った雪組で『追憶のバルセロナ』新人公演主演、バウホール公演『送られなかった手紙』単独主演、同じく『さすらいの果てに』役代わり主演、全国ツアー公演『ベルサイユのばら』アンドレ、大劇場公演『堕天使の涙』エドモンなどを演じて、着実に力をつけた。今年2月の宝塚大劇場公演『明智小五郎の事件簿』『TUXEDOJAZZ』が壮一帆さんの花組再デビュー。2作目になる『アデュー・マルセイユ』『ラブ・シンフォニー』は10月29日まで上演中だ。

「研12になって思うのは、やっぱり男役には10年が必要だということ。もちろん個人差はありますが、私の場合は研8,9の時に何度も頭を打ち、山を一つ越えたかなと思えた時に、あ、10年経った、これから男役としての新たな1年が始まるんだなと、感じたのを思い出します。ありきたりな言葉ですが、私たちにとって何よりも大切なのは、宝塚が好きという気持ち。好きで宝塚に入ったので、宝塚を好きで観てくださる方たちが大好き。いただいた愛情を忘れてはいけないなと思います。その気持ちをベースに、もっといろんなことに挑戦して、人としても役者としても成長し続けていきたいですね」

初舞台当時から少しも変わらない、まぶしいほどのさわやかさの芯には、竜巻のようなエネルギーが秘められている。ナマの舞台の演技者として、観客に対する最上のもてなし方を知っている、ニクい人だ。

※次号のフェアリーインタビューは
花組の真野すがたさんの予定です。

壮 一帆 So Kazuho 1996年『CAN-CAN』で初舞台、同年花組に配属。 2001年雪組に組替え。同年『愛 燃える』新人公演で初主役。02年『ホップ スコッチ』で立木遥、音月桂と共にバウホール公演初主演。06年12月花組へ組替え。 兵庫県出身/愛称・So
インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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