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月組 桐生 園加

10月4日まで上演中の、宝塚大劇場月組公演は、ヨハン・シュトラウス作曲のオペレッタ「ジプシー男爵」を現代的にリメイクした『ジプシー男爵』と、月のもつ神秘的な美しさ、輝きが発するエネルギーをバックにRhapsodic(熱狂的に)歌い踊るダンシング・レビュー『Rhapsodic Moon』の2本立て。 月組のムードメーカー的存在の桐生園加、卓越したダンス力と深みのある芝居で客席を魅了する。

ショースターの魅力が炸裂する熱く美しいダンスシーンを

 空中で静止しているかのような安定感と、キレのよさ。男役・桐生園加さんのダンスは、緩急を巧みに操り、観客のハートを捉える。月組を代表するショースターの一人と言われる所以だ。現在、10月4日まで宝塚大劇場公演、ミュージカル『ジプシー男爵』と新生月組による初めての新作ショー『Rhapsodic Moon』に出演中。

「ショー『Rhapsodic Moon』はどの場面も人数が多く、エネルギッシュ。その分、一人が踊れる空間は狭くなりますが、限られた空間をうまく使うことで、壮大なシーンが出来上がります。息の合った、美しい “ザ・タカラヅカ”という舞台を見ていただきたいですね」


 桐生園加さんは1998年、宙組誕生のお披露目公演『シトラスの風』で初舞台を踏んだ。月組トップ霧矢大夢の4学年下。今では組長を含め上級生は5名のみ。月組のまとめ役、ムードメーカー的存在である。
 「私は新人公演時代からたくさんの上級生、トップさんからたくさんの事を学びました。数々の経験と観劇する立場から今思うのは、自分がいいと思うこととお客様がいいと思われることは違う場合があり、自分はしっかり演じているつもりで自己満足にならないように、ファンの方たちの声をお聞きすることも大切にしています。経験の浅い下級生時代は、技術がそこまで達しないまま、自分の色を出すことに集中しがち。伝えてあげられる事は伝えたい。そうしたら自分自身の励みにもなり、自分もお稽古場での迷いがなくなってきます」

 宝塚の伝統は日々、受け継がれていく。絶え間ない努力の先に必ず立てる舞台がある幸せを、桐生園加さんは伝え続ける。


 大人数で踊るショーと同様に、ヨハン・シュトラウスII世のオペレッタを現代的にリメイクしたミュージカル『ジプシー男爵』でも、桐生園加さんは久々にグループ芝居を楽しんでいる。桐生園加さん演じるトボルは、ジプシーの中の一人だ。

 「私は今春4月、新生月組披露公演『スカーレット・ピンパーネル』でプリンス・オブ・ウェールズを演じました。登場人物の中で最も位が高く、自分のペースで押し進めていく役。潤色・演出の小池修一郎先生が、桐生園加の得意なダンスを取り入れて、映画『王は踊る』のような感じでやってみては?と。初めての高貴な役で、すごく勉強になりましたし、本当に楽しかったです。そのあとのトボル役は、大勢を引き連れた芝居の感覚を取り戻すのに少し時間がかかりましたが、これまでの経験を生かし、深みのある芝居をしたいと思います」

 時代は1738年、オーストリア=ハンガリー帝国の東南端の町テメシュパールが舞台。20数年前までオスマン・トルコの支配下にあり、トルコ総督が隠した財宝があると言い伝えられているテメシュパールに、ある日、亡命を余儀なくされていた領主の息子シュテルク・バリンカイが帰ってくるー。

 稽古が始まった頃、富裕層とジプシーとが対立する場面で「何だとっ!」と立ち上がった桐生園加さんに、脚本・演出の谷正純氏の声が飛んだ。「ちがう!」

 「谷先生はジプシーの中にもあるやさしいイメージを求めていらっしゃり、人と人との絆を大事にする人情に厚い部分や家族愛などがたっぷり描かれています。しかも喜劇だから展開が早い。月組公演『ジプシー男爵』は文句なしに楽しんでいただける作品です」


 激しく強いだけではないジプシーの精神的な営みは、目にこそ見えないが、トボルを演じる桐生園加さんの全身から燦々と放射され、我々を癒してくれる。

桐生 園加さん

1998年『シトラスの風』で初舞台、翌年花組に配属。2006年宝塚バウホール公演『Young Bloods!!』でバウ初主演。同年、月組に組替え。
神奈川県出身/愛称・そのか

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
宝塚の情報誌ウィズたからづか

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