1月1日から2月1日まで上演、2010年の幕開きを飾る星組・宝塚大劇場公演は、18世紀前半のオーストリアを舞台としたミュージカル『ハプスブルクの宝剣』-魂に宿る光-とグラン・ファンタジー『BOLERO』-ある愛-の2本立て。 スラリとした手足に現代的なルックスが舞台に映える夢乃聖夏、数々の挑戦を経て成長し、新春の舞台に挑む。
2007年、最後の新人公演『エル・アルコン-鷹-』で主役ティリアン・パーシモンを鮮やかに演じ終えた夢乃聖夏さんを待っていたのは、宝塚バウホール公演『ANNA KARENINA』の主演だった。
「初めての新公主演で、新しい発見や学ぶことがあり感無量でした。その興奮が冷め切らない1週間後にバウ主演のお話をいただき、これはもう自分を信じて、やるしかないと」
夢乃聖夏さんはこれまで、一つ課題をクリアするたびに新しい自分にバトンを渡す思いでやってきた。500人劇場のバウホールで10日間、主演するのは初めてのことだったが、これを成功させたらまた新しい自分にバトンを渡せる―。その確信が夢乃聖夏さんの決意を後押しした。
一生懸命さは下級生の頃から変わらない。2001年4月『ベルサイユのばら』で初舞台を踏み、配属された星組の新人公演で初めて通し役を得たのは02年『プラハの春』だった。本役は2年先輩の柚希礼音。それ以後も、04年『花舞う長安』の寿王を含め、07年『シークレット・ハンター』のセルジオで合計5作、柚希礼音の役を演じてきた。
2009年6月、その柚希礼音率いる新生星組披露公演『太王四神記ver.II』で、夢乃聖夏さんは大長老の腹心サリャンの人生を生きた。
「静の芝居のむずかしさに直面しました。台詞がほとんどなく内に秘めるものをどうやって体の動きだけで表現したらいいのか、しかも罪の償いをしようとして殺される場面まで気持ちの流れを段階的に伝えなければお客様は唐突に感じてしまいます。出会う役は毎回、新しい人物。常に挑戦です」
その頃から夢乃聖夏さんの面長な顔がさらに引き締まり、チャーミング度が上がってきた。どんどん期待を集め、いい仕事をしている証拠である。
夢乃聖夏さんは今、2010年1月1日に初日を迎える星組宝塚大劇場公演『ハプスブルクの宝剣-魂に宿る光-』『BOLERO』の稽古、真っ最中だ。
「藤本ひとみさんの原作をもとに植田景子先生が脚本と演出を担当された『ハプスブルクの宝剣』は、ハプスブルクの宝剣と異名をとる才気溢れるエドゥアルト・フォン・オーソヴィルの壮絶な人生とマリア・テレジアとの恋の確執を描いた作品です。私はハンガリーの軍人グレゴール・バチャーニ役を演じます。トップの柚希礼音さん演じるエドゥアルトはハプスブルク家の主君フランツの頼みを受け、オーストリアを救うために、ハンガリーを味方につけようと奔走します。ハンガリーにやってきたエドゥアルトは6年ぶりに会ったバチャーニに、力を貸してくれと頼み、バチャーニは条件としてハンガリーの独立を求めます。原作では二人は親友のように仲良くなっていきますが、舞台では幕が開いて物語が中盤に差し掛かったところでバチャーニが出てくるので、他の登場人物と温度差がないようにと心がけています」
役づくりの目標は、オーストリア人にはないハンガリー人の熱さとスケールの大きさ、そして独立に対する情熱や自分自身に賭ける思いの熱さだ。今回初めて柚希礼音と舞台上でがっぷり絡む。
「これからも自分のペースを守り、その時々で1番大事なものを確実に吸収していければと思います。外見が成長しているように見えても消化不良で中身が伴わなければ何にもなりません。あとは、のびのびと自分らしく、笑って健康にすごせたら最高です」
笑顔はがんばったその先にあるもの、と夢乃聖夏さんの舞台姿が教えてくれる。
2001年『ベルサイユのばら2001』で初舞台、星組に配属。07年『エル・アルコン-鷹-』新人公演で初主演。08年バウ・ワークショップ『ANNA KARENINA』でバウ初主演。
佐賀県出身/愛称・ともみん、息子