11月9日まで上演中の月組・宝塚大劇場公演は、ミュージカル・ロマン『ラストプレイ-祈りのように-』と、ファンタスティック・ショー『Heat on Beat!』の2本立て。 舞台映えする容姿とスタイルの良さで目をひく男役スター星条海斗、10年目の舞台に心を込め、瀬奈じゅんのサヨナラ公演を月組一丸となり盛り上げる。
月組トップスターの退団公演が11月9日まで宝塚大劇場で上演中だ。出演者の一人、星条海斗さんは「ご一緒できる最後の舞台。トップの瀬奈じゅんさんがいかに気持ちよく、有終の美を飾られるか、全員が一丸となって取り組んでいます」と熱い思いを語る。
「私が研10になる前の大事な数年間、たくさんのことを教えていただきました。初舞台から研5くらいまでは、トップのかたは雲の上の存在で、こちらから話しかけることなどできません。研6くらいからトップさんの後ろで踊れたり、直接アドバイスをいただく機会に恵まれたりするのですが、その頃、瀬奈さんが月組の主演スターになられて、お化粧を始め何から何までご指導いただきました。私は新人公演で瀬奈さんの役を演じたことはありませんが、5年前の自分は別人と思うくらい、お世話になっています」
星条海斗さんが新人公演で主演したのは2006年『暁のローマ』で研6のとき。専科の轟悠が主役カエサル、月組トップの瀬奈じゅんがブルータスを演じた作品である。
「これからは自分が下級生に教えていくことで恩返しをしなければ。といっても口で言うのは苦手なので、お稽古をしている姿を見て感じてもらい、モチベーションが上がるような存在でいたいですね」
ミュージカル・ロマン『ラスト プレイ』の作・演出は、独自の男役像を創り続けて根強いファンをもつ座付作者・正塚晴彦氏。月組では2007年『マジシャンの憂鬱』以来だが、2000年に入団した星条海斗さんはそれ以前も正塚作品に出合っていない。
「時代物やコスチューム物とは違い、現代物でナチュラルなお芝居は、上級生とのキャリアの違いを実感します。型から入らず、心から動くのみ。不必要な動きは一切排除。それでも2階席の後ろまでお届けできなければいけない。でも私も研10になり、今までできなかったことが少しずつできるようになってきているので、すごく楽しんでいます。ショー
『Heat on Beat!!』はダンサー瀬奈じゅんさんの魅力満載。フロアプレイの一場面を感じさせる斬新なプロローグなので、お客様も客席で踊りだしたくなるのではないでしょうか。いきなりジャズから始まるのも新鮮。たくさん踊らせていただいています」
この公演で瀬奈じゅんと一緒に退団する人は多く、星条海斗さんは自分が上級生になったことを実感する毎日だという。
「これまでも月組の世代交代を見てきましたが、新しい月組を引っ張って行く上級生の一人に加わる責任を自覚せざるをえず、少々焦る気持ちもあるんです」
月組次期トップの霧矢大夢が主演した08年、夏の博多座公演『ME AND MY GIRL』にヘアフォード家の弁護士パーチェスター役で出演し、霧矢ビルとの掛け合いの妙を堪能した。同年11月、『夢の浮橋』では夕霧の子の宰相の中将という源氏物語では珍しい悪役を好演した。今夏『エリザベート』のシュヴァルツエンベルク公爵を経て、研10最後の舞台に魂を込める。
「一貫して変らず、宝塚の舞台人として大切にしていることは、嘘をつかないことです。思ってもいないのに思っているような仕草をしない。表現したいことがないのに表現しているような踊りを踊らない。心から本当に気持ちを動かさないと臨場感は出せません。自分が楽しくない時は心が動いていない時。心が動いて体が動き、台詞が出ます。自分の心が動かないと人の心も動かせないと信じています」
星条海斗さんの深く透き通った瞳の奥に、真心が映し出されている。
2000年『源氏物語あさきゆめみし』で初舞台、月組に配属。2006年『暁のローマ』で新人公演初主演。
神奈川県出身/愛称・マギー