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星組 紅 ゆずる

6月26日から7月27日まで上演の星組宝塚大劇場公演は、幻想歌舞劇『太王四神記 Ver.II』-新たなる王の旅立ち-、本年1月、花組により上演し大好評を得た作品のニュー・バージョン。 長身で舞台映えする立ち姿に涼しげな容姿が魅力の星組若手スター紅ゆずる、四神チュムチを明るくコミカルに演じ、新主演スター柚希礼音を中心とした新生星組を盛り上げる。

四神チュムチ役で新しい魅力をたっぷりと

 宝塚歌劇95周年の初夏を彩る宝塚大劇場公演『太王四神記 Ver.II』―新たなる王の旅立ち―が、いよいよ6月26日に初日を迎える。ペ・ヨンジュン主演で話題になった韓国歴史ファンタジードラマ「太王四神記」を、宝塚歌劇団が世界で初めてミュージカル化したのが『太王四神記』―チュシンの星のもとに―。韓国ドラマ初の宝塚歌劇化であり、今年1月、花組で上演されてダイナミックかつ幻想的な舞台が大好評を得た。

 今回は新主演スター・柚希礼音をトップに、新しい陣容で臨む新生星組のために用意されたニューバージョン。紀元前から7世紀まで朝鮮半島に実在した高句麗を舞台に神話、伝説、史実を織り合わせた壮大な物語だ。四神の一人、シウ部族出身の傭兵チュムチを演じるのが、昨年『THE SCARLET PIMPERNEL』の新人公演で主役パーシー・ブレイクニーを演じて人気急上昇中の紅ゆずるさんである。

「チュムチは私にとって初めての荒くれ者。深刻な場面が続いたあとに、思い切り明るくコミカルに演じて、お客様に笑っていただきたいですね」

 2002年に初舞台を踏んで以来、貴族など高貴な役を演じることが多かった紅ゆずるさん。2008年4月にトルストイの恋愛悲劇をミュージカル化したバウ・ワークショップ公演『ANNA KARENINA』で演じた準主役アレクセイ・カレーニンも高級官僚。紅ゆずるさんにとって初めての通し役だ。

「これまでも名前のある役はたくさんいただいてきましたが、最後まで一人の役で通したのはカレーニンが初めて。すごく楽しかったですね。カレーニンの気持ちを掘り下げていくうちに、愛情が深くなり、自分が舞台でカレーニンという人物を壊してしまってはいけない、役に対して失礼だと思うまでになりました。アンナとの出会いから、日常生活の様子まで、時間をかけて想像していくと、ある瞬間、カレーニンの内面の本質的なものがすべてつながってきたんです。自分の中の『なぜ?』をずっと考え続けるため、とても時間がかかるのですが、オフでもスイッチがオンになりっぱなしの自分を楽しんでいます」

 このカレーニン役で、一気に注目が集まった。その直後に新公初主演。イギリス貴族パーシー役を熱演した。
「緊張して頭の中が真っ白になってしまうんじゃないかと思っていたのですが、舞台に立つと吹っ切れるものなんですね。グラパンに扮した場面ではお客様が笑ってくださると、もっと笑っていただきたくなって。テンションが上がりアドリブがたくさん飛び出しました」

 この主役経験が、紅ゆずるさんに、あることを気づかせたという。舞台に立っている自分を冷静に俯瞰する、もう一人の自分の存在だ。
「だから自分は緊張しても舞い上がることはないと思います。主役を経験して、周りから送られてくるパワーを感じることができました。舞台は自分一人では絶対にできない。と同時に2500人のお客様の前に自分一人で立てなければいけない。自分の中に役がきっちり入っていないとできません。今度は自分が『太王四神記』のチュムチ役で、主役の柚希さんにたくさんパワーを感じていただけるよう務めます」

 紅ゆずるさんは、台詞で大声を張り上げるのは初めて。まだどこにも披露していない紅ゆずるさんの新しい魅力が、たっぷり見られる舞台である。

紅 ゆずるさん

2002年『プラハの春』で初舞台、星組に配属。08年、バウ・ワークショップ公演『ANNA KARENINA』のカレーニンを好演、同年『THE SCARLET PIMPERNEL』で新人公演初主演。
大阪府出身/愛称・さゆみ、ゆずるん、べに

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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