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月組 遼河 はるひ

月組宝塚大劇場公演は5月22日から6月22日まで、宝塚歌劇を代表する人気ミュージカルへと成長した『エリザベート-愛と死の輪舞-』。 美しいシルエットに洗練された雰囲気が魅力の男役スター遼河はるひが、繊細な皇太子ルドルフと熱い革命家エルマーを役替わりで演じる。

7度目の上演となる「エリザベート」に悲劇の皇太子ルドルフ役で初めて挑む

「『エリザベート』でルドルフを演じるとは思っていなかったのですが、オーディションがあって、声質がルドルフに向いていると」
 5月22日から始まる月組宝塚大劇場公演『エリザベート』で、オーストリア=ハンガリー帝国皇太子ルドルフを演じる遼河はるひさん。都会的で、品があり、ゴージャスという言葉がとても似合う、数少ない男役だ。
「制作発表の時に、皆さんから、『エリザベート』というとルドルフがトートに死へと誘われる銀橋の場面と名曲[闇が広がる][僕はママの鏡だから]などが印象的で楽しみだとおっしゃっていただき、プレッシャーもありますが、自分でもすごく楽しみです。ルドルフと役替わりで演じるハンガリーの革命家エルマーでは低めの声を出すので、お客様にはギャップを楽しんでいただければうれしいです」

 1996年の初演から7度目の上演となる宝塚歌劇を代表する人気ミュージカル『エリザベート』だが、役替わりが行われるのは初めての試みだ。ルドルフを3人、エルマーとシュテファンを2人が交替で担当するが、大劇場公演45回のうち、遼河はるひさんがルドルフを演じるのは15回、エルマーは30回。チケットが手に入りにくく、特別な熱気に包まれる初日と千秋楽のルドルフ役は、遼河はるひさんである。
「2回公演の日は、午前中にエルマーを、午後にルドルフを演じることがあり、良い意味で緊張しますね。前回の月組公演からまだ4年しか経っていませんが、新しい『エリザベート』を目標に、いいものを創り上げたいという思いでお稽古場は熱気いっぱい、すごくいい雰囲気です。歌もパワーがあり、明るく、みんながんばっています。ミルクの場面は特に必見です」

 遼河はるひさんは2001年9月に月組から宙組へ移籍し、2006年7月に宙組から月組に戻った。宙組『エリザベート』は月組時代の1998年12月、月組『エリザベート』は宙組時代の2005年2月に上演されたから、遼河はるひさんにとって、『エリザベート』出演は初体験なのだ。
 「初演の雪組と星組は2階席で観ましたが、前回の月組公演は映像で観ました。私の中ではいろんな意味で新鮮です。ガラス細工のように繊細なルドルフ役をさせていただくこともそうですし、きれいな野心をもって体制にはむかっていくエルマーのような熱い人物は久しぶり。演じていて本当に楽しいですね」

 4月の陽光を受けながら何気ない表情で話す素顔の遼河はるひさんの、澄んだ瞳の中に大きな力がある。気づいていますかと率直にお聞きすると、ゆっくり頷きながら、
「最近、自分の中に芯が通っているのを感じています。これまで節目はたくさんありましたが、『HOLLYWOOD LOVER』の時に役の心をストイックに追究した結果、見えてきたものがあり、その後、『グレート・ギャツビー』で憧れていた大好きな役ニック・キャラウェイに挑み、自分なりに納得できる演技ができたことで、壁を一つ越えられたと思っています。ニックは出ずっぱりでしたが、ニックを通してお客様はギャツビーをごらんになる。まさにニックの自分が感じているところを見ていただけるのが楽しかったですね」

 2度の組替え。その間、『WESTSIDE STORY』 『ファントム』『ME AND MY GIRL』などの海外ミュージカルや、新東京宝塚劇場?落とし公演『いますみれ花咲く』『愛のソナタ』に出演し、『鳳凰伝』で新人公演主演、宝塚バウホール主演公演も『春ふたたび』と『Le Petit Jardin』、ホテル阪急インターナショナルでの「宝塚巴里祭2006」にも主演した。そして今年3月、東京曾舘、宝塚ホテルとウェスティンナゴヤキャッスルで開催したディナーショーが大人気だった。

 「名古屋は出身地。広い会場に2日間、500人以上のお客様がお越しくださいました。お客様との触れ合いを大切にしたいと思い、最後に写真入りの自筆の歌詞カードを全テーブルを回って配りました。遼河はるひ流のディナーショーをこれからもお届けしたいですね」
 ファンの一人として是非、観たいのが、哀愁漂う大人の恋物語。
 でも今の遼河はるひさんは『エリザベート』に夢中だ。
 「今の自分は芸名と本名とがほとんど一緒の感覚ですね。遼河はるひという男役をつくっているのではなく、男役をつくらないというスタンス。もちろん役を演じるときは創りますが、演じる役は遼河はるひではありませんから」

 素のご自身は、人に頼られればそれを受け止め、甘える時は甘える、と自己分析する。その大らかな凛々しさが、とても眩しい。

遼河 はるひさん

1996年『CAN-CAN』で初舞台、月組に配属。2001年宙組へ組替え。02年『鳳凰伝』で新人公演初主演。03年バウワークショップ『春ふたたび』でバウ初主演。05年バウホール公演『Le Petit Jardin』でバウ主演。06年月組へ組替え。
愛知県出身/愛称・AHI

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
宝塚の情報誌ウィズたからづか

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