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月組 明日海 りお

11月7日から12月11日まで上演中の宝塚大劇場月組公演は、源氏物語の最終章「宇治十帖」を舞台化した源氏物語千年紀頌『夢の浮橋』と、「熱」をテーマにしたファナティック・ショー『Apasionado!!』の2本立て。 数々の抜擢で注目を集める月組男役ホープ明日海りお、『夢の浮橋』新人公演では宮中を華やかに彩る貴公子・匂宮に挑戦!

源氏物語の終章「宇治十帖」新公で匂宮を艶やかに、美しく、奔放に

源氏物語「宇治十帖」を舞台化した『夢の浮橋』で、研6の明日海りおさんが主役・匂宮を演じる。12月2日に行なわれる新人公演でのことだ。

「匂宮は月組主演男役・瀬奈じゅんさんの魅力に合った艶っぽい役。自分には大きすぎる役ですが、ベストを尽くします。日本物なので、まず着物の着こなしが大事。大きな衣装にとらわれすぎず、自由に動けるようになりたいと思います」

 宝塚歌劇の中でも日本物は数少なく、明日海りおさんにとっては2006年2月のバウホール公演『想夫恋』以来である。この、平家物語「小督」を題材にした舞台でも烏帽子がよく似合っていた。

 新公主演は2度目。今年の4月と6月に宝塚大劇場と東京宝塚劇場とで『ME AND MY GIRL』のビルを演じたばかりだ。明日海りおさん自身、大好きでよく観ていた作品なのだそう。

「本公演で初めての娘役ジャッキーとソフィアを役替わりで演じることが決まっていたので、自分がビルをさせていただくことはないだろうなと思っていましたから、やれるとわかったときはうれしかったです。ビルは包容力があって優しくて、誰とでも臆せず付き合えるラフさが魅力。自分を解き放てないと、あの海外ミュージカルのテンポは出せません。いかにリラックスして演じられるかが大きな課題でした。1本物大作を凝縮した2時間近い新公で、体力と集中力を持続させるのにも苦心しました」

 初の娘役で本公演の舞台に立ちながら、終演後に主役ビルの稽古に励む毎日だった。経験豊富な上級生でもハードルが高いとされる男役と娘役との切換え。だが注目度バツグンの若手ホープ、明日海りおさんが果敢に挑んだ成果は大きかった。

「いつも思うのは、未熟な自分がこんなにいろんなことをさせていただき、すごく幸せだなあと。一生懸命やれば、みなさんがそれを見ていてくださる。ありがたいです」

 数々の抜擢に、チャレンジャー精神で挑み続ける明日海りおさんの原動力は、
「宝塚が大好きだから」

 夢が叶った初舞台は2003年4月、月組公演『花の宝塚風土記』。宝塚受験を決意したのは、そのわずか3年前だ。クラシックバレエ教室の友人に勧められてショー『BLUE・MOON・BLUE』をビデオで観たのがきっかけだった。

「衝撃を受けました。華やかで、独特の世界観があって」
 初観劇したのは受験直前、宝塚大劇場公演『ゼンダ城の虜』『ジャズマニア』。
 誰もが羨むような順調なスタートである。入団後も『エリザベート』新人公演の少年ルドルフ役を研2で演じるなど、熱い期待に応え続ける明日海りおさんは2006年5月、『暁のローマ』新人公演で、カエサルの副将アントニウス役に抜擢された。本公演で霧矢大夢が演じ、歌劇史上に残る長台詞の大演説場面が絶賛を浴びていた。ブルータスを追い込むべく、群集を言葉巧みに説得する大きな見せ場を乗り切らなければならない、難しい役どころだ。

「初めて銀橋を渡らせていただいたのですが、スポットライトがあまりに眩しくて思わず後ろに倒れそうになり、この強さに負けないように成長しなければいけないんだなと。悪役ではないけれど色の濃い役なので、いろいろな表情をつくり上げていくのがとても楽しかったです」

 2007年1月の『パリの空よりも高く』新人公演でも準主役と拮抗するジョルジュ役を、同年8月の『マジシャンの憂鬱』新人公演では準主役ボルディジャールを演じ、ついに2008年1月、宝塚バウホール開場30周年記念ワークショップ『ホフマン物語』でバウ初主演を果たした。

「オペラの曲を初めて歌わせていただきました。各組競演のトップバッターでプレッシャーもあり、ペース配分が分からずに咽喉を痛めてケアの大事さを思い知りました」

 新たな課題を克服して臨んだ『ME AND MY GIRL』で新公初主演。8月には同作品で博多座にも出演し、娘役ジャッキーと男役ジェラルドを役がわりで演じた。

「新しい作品をつくるつもりで取り組んだ結果、さらに見えてきたものがあり、たくさん収穫を得た舞台でした」

 宝塚歌劇は来年95周年を迎える。研7になる明日海りおさんに抱負をお聞きすると、
「今、久しぶりにショー『Apasionado!!』に出演していて思うのですが、お芝居は役の人物を演じますが、ショーは明日海りお自身。自分らしさプラス新しい自分を前に出す力を磨き、強く、男役らしく、やっていきたいです」

 娘役経験も何もかも、すべてが男役・明日海りおを輝かせる光になる。
 2009年1月3日、東京宝塚劇場公演『夢の浮橋』『Apasionado!!』の幕が上がる。そして22日の新人公演で、明日海りおさんが再び匂宮になる。

明日海 りおさん

2003年『花の宝塚風土記』で初舞台、月組に配属。08年『ホフマン物語』で前半はホフマン、後半は女神・ニクラウスを演じバウホール初主演。『ME AND MY GIRL』では役替わりでジャッキーとソフィアを演じ、同公演で新人公演初主演。
静岡県出身/愛称・みりお、あすみ君

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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