ラジオパーソナリティ 小山乃里子さんと観る 鉄斎と蓮月

ラジオパーソナリティ 小山乃里子さんと観る 鉄斎と蓮月

初詣客が行き交う清荒神清澄寺の参道には干柿や焼銀杏、玉こんにゃくの露店が軒を並べ、正月ならではの華やいだ光景が広がります。 その賑わいの中、鉄斎美術館で1月8日から開催されているのが「鉄斎と蓮月」。鉄斎の人格形成に大きな影響を及ぼし、鉄斎が生涯尊敬し続けた女流歌人で陶芸家の大田垣蓮月をテーマに、いつもとは趣の違う展覧会となっています。 フリーのアナウンサーで宝塚歌劇を始め文化に造詣の深い、小山乃里子さんと一願地蔵に手を合わせて、その奥に凛と佇む鉄斎美術館を訪れました。

蓮月への愛を感じる

宝塚は月に1、2度観劇や取材で訪れていますが、荒神さんには久しぶりにお参りさせてもらいました。七味や麹、佃煮の店が並ぶ参道は宝塚の名物ですね。そこに美術館があるというのもユニークな気がします。

 私が住んでいる神戸の東灘区には神戸市立小磯記念美術館を始め8つ美術館があり、近くには県立美術館もあるので、美術鑑賞にはよく行きますし、ラジオでも話題にします。でも、洋画が中心なので鉄斎の画に触れる機会はあまりありませんでした。

 展覧会では鉄斎が20年間師弟として、その生き方に影響を受けた蓮月との合作や蓮月を通して学んだ和歌や煎茶に因んだ画が展示されていますが、日本最古の茶園の謂れを画にした栂尾高山寺の「梅山幽趣図」(前期展示)や日本の煎茶道の祖、売茶翁が東福寺で茶を売る「高遊外売茶図」(前期展示)などはとても緑や赤の色彩が美しく鉄斎の画に持っていた幽玄のイメージとは別のものでした。

 蓮月が手びねりした徳利「藤娘図徳利」(前期展示)に惹かれるものを感じました。尼の和歌「いにしへのてぶりゆかしきうつしゑの世にながれたる藤波の花」に添えて、藤娘が描かれています。同じ和歌に尼が好きだった大津絵の藤娘を鉄斎が描いた合作もあり、鉄斎の愛を感じます。蓮月没後も愛蔵の蓮月焼の箱に「蓮月幽居図」を描いたり、思慕の念は生涯続いたとのこと。

 「大田垣蓮月肖像」(前・後期展示 右上の作品)は没後に略歴を賛にして仕上げた作品だそうですが、実は存命中に描いた肖像画を蓮月が「この皺くちゃ婆の画を遺して」と戒め、お蔵入りになっていたものだとか。確かにその肖像は女性には見えません。若い頃は美人だったようですが、出家してからは却ってその美しさを邪魔に思い、歯を抜いたという逸話を聞き、烈婦蓮月と言わしめたのもわかる気がします。でも、ただ強いだけでなく、清貧に甘んずることなく慈善活動も積極的にやっていたなかなか真似のできない女性。鉄斎の蓮月に対する愛に触れる展覧会です。

ラジオパーソナリティ 小山乃里子さんと観る 鉄斎と蓮月

小山乃里子・1941年小樽生まれ。
関西学院大学卒業後、65年ラジオ関西に入社。71年からフリーとしてラジオ、テレビで活躍。95年から神戸市議会議員を1期務める。
現在は81年からラジオ関西で放送されている「ビバ・タカラジェンヌ」(毎日曜10:00pm~)を始め「ラジ関金曜小山乃里子です」ABCラジオ「ハートフルタイム」など。
旅行ペンクラブ会員

宝塚の情報誌ウィズたからづか

ウィズたからづかの最新コンテンツ