10月7日から鉄斎の書の展覧会が開催されている鉄斎美術館。清荒神清澄寺境内にはまだ、葉の青いイチョウの大木から銀杏の実がこぼれ秋を感じさせてくれます。一願地蔵尊の横に掲示された展覧会のポスターに誘われ鉄斎美術館へと足を運ぶと、そこは墨の芸術「書」の世界です。鉄斎美術館を訪れるのは初めてという関西テレビのママアナ、関純子さんと、「鉄斎―書巻の気あふれる書―」を鑑賞、学問に徹することによって生まれる香気というべき「書巻の気」に触れました。
瀬戸内寂聴さんや相田みつをさんの書画の展覧会を見せていただいたことはありますが、本格的な書道展は初めてなので、鉄斎美術館で鉄斎の書に出会えるのを楽しみにしていました。書というと地味なイメージですが、ポスターがとても斬新で、まずポスターに興味をそそられました。中国の詩人、白居易の「鶴に問う詩」を鉄斎が力強い隷書で書いた「白居易問鶴詩書」(前期展示)がお洒落にデザインされ、目を惹きます。烏や鳶は食べ物を争い、雀は巣を争うのに、鶴は風雪にも鳴くことなく一日中片足で立って動きもしないのは如何に。という内容の詩にも心動かされるものがあります。
会場に入ると正面にドンと据えられた二曲屏風「雪・月・花・茶詩書」(前期、左上の写真・関さんの後)が目に飛び込んできます。鉄斎70歳代の作品で京都市美術館より、今回の展覧会のために里帰りしたそうですが、象形文字である漢字の存在感を感じますね。
篆書で書かれた雪、月、華、茶という文字は読むことができても、行書や草書などは殆ど読めないので、作品に添えられた訓読と大意は、現代人にとって鉄斎が書に託した思いを少しでも知る、貴重な研究だということも初めて解りました。
若い頃の作品は戒めの言葉が多いのに比べ、晩年は自然の風景を表した「松風蘿月書」(前期)や心地好い心境を表した「陶然書」(前期)など、字形も優しく、心が癒される書になっているような気がします。
美術館は展示内容もさることながら見せ方がとても重要だと思うのですが、鉄斎美術館はワンフロアーを広く使ってとても贅沢な空間です。落ち着いた雰囲気の中でゆったりと画や書を観ることができ、知的好奇心が大いにくすぐられる美術館ではないでしょうか。
関純子・豊中市生まれ。1988年大阪大学卒業。同年、関西テレビ放送に入社、アナウンス部に所属。一男一女のママアナ。「痛快!エブリデイ」の司会を桂南光氏と共に約15年勤める。09年10月13日から昼の帯番組「あっぷ&UP!」のレギュラー。ブログ「ママアナ関純子がゆく」を執筆