彫刻画家 淺尾水香子さんと観る 鉄斎の器玩—悠悠談—

彫刻画家 淺尾水香子さんと観る 鉄斎の器玩—悠悠談—

例年より早く1月8日からの開館となった鉄斎美術館。清荒神清澄寺で初詣を済ませた参拝者が開館初日から多く訪れ賑わいを見せています。3月2日まで開催している展覧会「鉄斎の器玩-悠悠談-」は鉄斎が絵付したり書を書いた茶道具を中心とした陶器、木工品などいずれも名工との合作作品のほか、鉄斎の手造や妻・春子との合作が展示されています。宝塚在住で彫刻画家の淺尾水香子さんと新春の美術館を訪ね鉄斎の個性溢れる工芸品を鑑賞しました。

信頼関係がすばらしい合作を生み出した

この展覧会では「鉄斎の器玩」が生まれた背景にある鉄斎と工芸家の信頼関係を肌で感じることができました。工芸作品に筆を加えると言うのは確かな信頼関係がないと出来ないことですから。清水六兵衞や中島菊斎など一流の陶芸家や指物師と鉄斎の間には人間として尊敬し合える関係があったことが窺え羨ましいかぎりです。

「古桐炉縁」(前期展示)は茶道に使う炉の全面に美しい緑で松を大胆に描いていて、その常識を破った感性にびっくりさせられます。用の美を追求した指物が鉄斎の筆によって新しい作品に生まれ変わったといえるでしょう。

これらは使われることはなかったでしょうね。「四君子絵桐印箪笥」(前期展示)は正面に蘭と霊芝、左右に竹と菊、裏にも梅が勢いよく描かれています。裏も是非見てみたいという衝動に駆られました(裏側は写真展示)。名工との合作とは全く違う妻、春子さんとの合作は鉄斎の人柄がしのばれるものでした。庸軒流の煎茶を嗜んでいた春子さんは、茶碗や香炉を多く作っていて、そこに鉄斎が絵付けした作品を見ると、全く気負い無く筆を運んでいて夫婦のほほえましい会話が聞こえてくるようでした。

鉄斎自身の手造り「狸香合」(前期展示)なども余技とはいえ、衰えない制作意欲に刺激を受けます。
私は70歳から自分の作品作りに没頭できるようになり昨年400号の「鳴門残照」という大作を彫りましたが、これからどれだけの作品を残せるか、自分自身への挑戦です。晩年も果敢に作品作りに挑んだ鉄斎さんを身近に感じ、力をいただきました。また、器玩に因んだ掛軸が随所に配置されているレイアウトも素晴らしく鉄斎を存分に味わうことができました。

彫刻画家 淺尾水香子さんと観る 鉄斎の器玩—悠悠談—

▲淺尾水香子・1979年日本表象美術協会入選を皮切りに、東京都知事賞など多数受賞し東京を中心に作家活動後、2000年淡路花博国際コンテスト審査委員長。地元宝塚に拠点を移す。海外での評価も高く04年国際平和美術展inアルゼンチンに国賓作家として招聘。07年国立新美術館展に「鳴門残照」400号を出品、総理大臣賞受賞。08年3月モナコ・日本芸術祭に「火炎」を出品、芸術親善大使として授与式に臨席。日本表象美術協会顧問。柏風会主宰

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