私は、1月下旬に宝塚市立文化施設ソリオホールで開かれていた第56回「宝塚市展」を覗いた。中でも洋画部門が抽象と具象の二部門に分けられていることに少し戸惑った。
さて、洋画部門の出品作品は、殆んど具象作品で、会場を占めていた。二部の抽象作品では、出品者の強烈で熱い作品が少なかった。もっと刺激的で斬新な作品制作への挑戦を望みたい。例えば、他市の市展にも出品している応募者には、一定の技術と構図の作品が繰り返し採用され、表現方法のマンネリ化が目に付いた。だが、同じような様式だと思われる描法の中にも、より深い表現を求めている出品者も散見できたことを付記しておこう。
優秀賞「H25−1−1」(百田力也)の白地に黒色での筆触による空間処理は面白い。奨励賞「2013視」(園田喜美子)は、社会的なテーマを新聞のコラージュ上に目のコラージュと工夫はしているが、コラージュ表現の安易さが気になる。「〇△□(四)」(寺田明)のコラージュ作品も、その表現技法の創意工夫は道半ばの感だ。入選の「周囲」(小田さくら)も、コラージュ技法の意味を今一度再考して欲しい。でも荒削りだが、可能性が垣間見られるので、次に期待したい。「見えない世界が見える世界を支えている」(毛利そよ香)は、着眼点に独自性が窺えるが、如何せん細密描写が単調だ。
次に一部の入選で印象に残った作品について。前田佳子の「赤いドレス」の画面背景の構成がユニークで、虚と実の表現の妙を見た。益田邦子の「古都ポルトをゆく」の風景描写の揺らぎに目を留めたが、色彩にもうひと工夫を。
見応えがあった「宝塚芸術展」
別会場の第23回「宝塚芸術展」も覗いてみた。山本修司の「綾梢Ⅱ」は、森の中から上空を見ているような体感を覚えた。空気中に光が溢れ、自然の生気が漲っている。田川絵理の「早春賦」は、変形の支持体上に白地をベースとし、半具象的な表現による光景から春の息吹が放たれていた。内田カネ子の「色鉛筆で・・・・・」は、題名どおり色鉛筆で上下に線がアトランダムに引かれ、蚯蚓がキャンパスに這っているような錯覚にとらわれた。小品が殆んどだが、見応えがあった。
最後に、「宝塚市展」の会場について一言。会場スペースの割には、余りにも作品数が多く、見る立場からは見づらく息苦しくなる。主催者に、会場設定の再考を促したい。
第56回を数える「宝塚市展」