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武庫川の不死鳥 「生(せい)」オブジェ

武庫川の不死鳥 「生(せい)」オブジェ

「生」 ,「スマイルマーク」 ,「祈りの石」 ,

 昨年12月初旬、宝塚市の武庫川中州に、「生」の石積みオブジェが、また再現された。「生」の石積みオブジェ(縦約20メートル、横約10メートル)は、2005年1月宝塚市の美術家大野良平さんが、阪神・淡路大震災の犠牲者を追悼し、「街と人の心の再生」の願いを込めて制作。だが、1年半後に流出してしまった。大野さんは「形ある物はいつかなくなるが、思いは消えない」と流出した「生」を語っていた。

 制作当時、阪急今津線の宝塚と宝塚南口駅間の車窓から「生」を見ていた乗客の間でも話題に上がっていた。さらに08年、宝塚市在住の作家有川浩さんが、小説「阪急電車」を執筆、その小説の冒頭に「生」が重要なモチーフとして取り上げられ、昨年映画化もされた。これが契機となり、それに呼応するように、10年、大野さんの母校である宝塚大学の学生や市民などボランティアと一緒に再び「生」を制作。

 昨年7月に三たび制作したが、9月上旬の台風で流出。そして、12月初旬、中州の草刈りの後、河原の石で「生」オブジェ4作目が、美術家、大学生、市民などボランティアにより再現された。

 先の震災から17年目となる今年1月17日の前日16日の夜には、宝塚市の犠牲者数と同じ118個の懐中電灯を並べてライトアップを行う。同時に、昨年3月の東日本大震災の被災地の復興を願い、数百個のペットボトルで「スマイルマーク」オブジェを制作したり、訪れた市民にオブジェの小石「祈りの石」に追悼メッセージを書いてもらい、二つの大震災の犠牲者に鎮魂の思いを届ける。

 大野さんは「〈生〉を見た人たちにとって、命の重みを考える機会となれば」と語ってくれた。私たちも、「生」の石積みオブジェから、再生への思いを後世に受け継がなければならないだろう。


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