パブリックアートという言葉は、まだ日本ではよく知られていない。簡単に言えば“街角や広場などの公共空間に置かれた、芸術的な価値のある作品”のことである。
もちろん彫刻作品だけではない。芸術的な要素が多く含まれる建築物や広場、公園や橋などもそうである。
そんなパブリックアートとしての橋が、宝塚大橋。既に本誌(ウィズたからづかVol.252)で紹介した彫刻家・淀井敏夫(1911~2005年)のブロンズ彫刻作品2点が宝塚大橋の中央部左右に対峙している。
その宝塚大橋の袂に、彫刻家・新谷琇紀(神戸市生まれ、1937~2006年)のブロンズ彫刻〈愛の手〉、橋の左右に舞踊しているような裸婦像が手の上に置かれている。
新谷は、彫刻家の父、新谷英夫(1907~1995年)の影響を受け、金沢美術工芸大学で彫刻家・柳原義達に師事している。
1965年、ローマに留学し、イタリア彫刻を学び、帰国後も神戸とイタリアを行き来しながら、西洋の具象彫刻を意識した作品を発表。また野外彫刻制作にも意欲的だった。殊に「アモーレ・愛」をテーマに、多くのモニュメントを制作している。
さて新谷の〈愛の手〉(図版写真)は作品が空間へ飛び出していくような、そんな動きを感じるが、この作品には、一時裸婦像が掌に弄ばれているのではないかという声が、上がったこともある。
ともあれ私は、市民が自由に行き交う宝塚大橋の〈愛の手〉が市民にその存在を認識されること、すなわち市民に支持されることで、宝塚ならではの新しい景観や文化が生まれる契機ともなるのではと考えている。