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「ひょうごゆかりの美術家展」に宝塚ゆかりの画家が3人

「ひょうごゆかりの美術家展」に宝塚ゆかりの画家が3人

宝塚ゆかりの画家、富岡鉄斎・橋本関雪・元永定正

本展は、今年が先の阪神大震災から15年を迎えることから、㈶兵庫県芸術文化協会が中心となり、“兵庫の美術を語り継ぐ”と銘打って開催した展覧会である。

 展覧会は、日本画、洋画、彫刻、陶芸、書、写真までの分野で活躍された、あるいは今も活躍されている作家の作品により構成されていた。日本画部門に富岡鉄斎(1836~1924)、橋本関雪(1883~1945)、洋画部門に元永定正(1922~)ら宝塚ゆかりの画家3人の作品が展示された。

 鉄斎作〈福禄寿図〉(図版)の左上部の賛(画の傍らに書くことば)には「私は、既に70歳を越え、更に7年を加え、77歳になった。77歳を喜寿と称し、また祝宴を開いた。喜んで南山の景色を描いた。私の風貌は寿老人に似ている」と認められている。鉄斎は殆んど独学で大和絵から南画に転じ、筆法、彩色とも南画の概念を越えた独自の文人画を完成。その画業を顕彰するため清荒神清澄寺が、そのコレクションを「鉄斎美術館」として一般公開している。
 つづく橋本関雪は、明治から昭和初期に掛けて活躍した日本画家で、1936年に宝塚売布に別邸(約2千8百坪)を取得している。邸内には回遊式庭園を設置するなど「冬花庵」と呼ばれている。


 余談はさておいて、本展に陳列された〈野兎図〉(図版)は、綿密な描線で描かれた四条派の伝統的画題である動物画。関雪は、昭和に入ると中国文人画を取り入れ、独自の画風から四条派の伝統に清新味を加えた「新南画」と呼ばれる画風を確立した。

 洋画部門の元永定正作〈いろはの2〉は、色鮮やかなフォルムにどことなくユーモアが溢れている。「赤、青、黄、緑、ピンクにベージュ、オレンジ、紫、白に黒の色はいろいろ。色は光の反射によって見えてくるが、私たちは色によって感情を動かされる」とは、元永の言葉である。元永作品の多くは明るい色に、楽しく映えるフォルムからなり、私たちの心をほんのりと明るくしてくれる。

 本展のようにジャンルを越えて、様々な作品を一堂に陳べられている背景に、多様な近代の息吹を受けて来た兵庫県という風土の特性も窺えた。改めて、伝統と進取の精神が共存していることを再認識させられた。


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