トップページ > 2010年02月号 >宝塚アート見聞記

あらゆるものと小さなひとつのために 「河崎ひろみ展」を訪ねて

あらゆるものと小さなひとつのために 「河崎ひろみ展」を訪ねて

最近の作家活動のテーマは「あらゆるものと小さなひとつのために」

 昨年10月下旬、京都のギャラリーモーニングで開かれていた「河崎ひろみ展」を訪ねた。

河崎ひろみ(1960年和歌山生まれ・宝塚市在住)は、京都教育大学付属高校在学中、美術系大学に進みたいと考えていた。そのため洋画家・井庭新太郎の研究所に通い、デッサンを学ぶ。当時のことを「テクニックに走らず、自由にさせてもらった」と回顧する。

 そして、京都市立芸術大学に進み、洋画を経て版画を専攻。初めは洋画を志望したが、油彩に馴染めなかった。自宅でスケッチ帳にペンで線を描き、水彩で着彩を試みていた。先日、私は河崎のアトリエで大学時代の水彩作品をみせてもらった。その頃は、ヘンリー・ミラー、池田満寿夫、難波田史男といった作家たちに関心を寄せていたそうだ。河崎の版画は、人や物の形を水彩画に近づけるような版画だった。だが、1984年大学院美術研究科を修了後、抽象的な油絵を再び描き始める。

 河崎は、終始一貫してアトリエで画面と対峙し、新しい空間造形を創造するのに腐心している。例えば、構図と色彩、変化と均衡、対比と調和、強調と省略、リズム、ハーモニー、コンポジションなどの追求といった具合に。


 ここで少し河崎の色彩について触れてみたい。一般的に色彩は、絵画の構造や構成に関わり、絵画としての空間を成立させる要素のひとつでもある。色彩は、河崎の絵画を思考する上でも、造形や筆触にも関わるので、大変重要な意味を持っている。

 こんな創作プロセスを経て、河崎の絵画が現われている。今後も色彩の問題は、河崎の継続課題であろう。何れにしても、真摯な絵画姿勢から創造される作品に出合えることを楽しみに待っているのは私一人だけではないだろう。

伊丹市立美術館 宮ノ前 072(772)7447

河崎ひろみ プロフィール
1960 和歌山県生まれ
1980 京都府洋画版画美術展(京都府ギャラリー)出品
1984 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了
1984 Rギャラリー(京都)個展
1986 ギャラリー白(大阪)個展
1993 ギャラリーMOCA(名古屋)個展
2003 ギャラリーけやき(三田市)個展
2003 たがやすように(和歌山県立近代美術館) 出品
2005 ギャラリー恵風(京都)個展
2009 ギャラリーモーニング(京都)個展
京都、大阪をはじめ全国で個展、グループ展多数

宝塚の情報誌ウィズたからづか

ウィズたからづかの最新コンテンツ