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もーやん えっちゃん ええほんのえ 「元永定正+中辻悦子絵本原画展」

もーやん  えっちゃん  ええほんのえ 「元永定正+中辻悦子絵本原画展」

宝塚市在住の現代美術アーティスト夫妻による絵本原画展

2007年1月から3月に掛けて伊丹市立美術館で開催された「元永定正+中辻悦子絵本原画展」が、今年の5月から10月に掛けて新潟市立新津美術館、倉敷市立美術館、下関市立美術館へ巡回した。私は、真夏の8月に倉敷市立美術館を訪れた。

 「もーやん」こと元永定正(1922年~)、「えっちゃん」こと中辻悦子(1937年~)夫妻は、共に戦後の関西を中心に現代美術の第一線で活動しながら、傍ら30年を超える絵本制作にも意欲的に取り組んでいる。

 1950年代後半に生まれた前衛美術集団〈具体美術協会〉の一員であった元永は、絵本においても抽象絵画による絵本を制作し、『もこ もこもこ』(文・谷川俊太郎、1977年刊)、『もけら もけら』(文・山下洋輔、構成・中辻悦子、1990年刊)などにユニークな造形を駆使し、絵本の世界に新風を巻き起こした。
 一方、中辻はグラフィックデザイナーを経て、1960年頃から本格的に現代美術を制作。シンプルな造形による豊かな表現と「ポコピン」人形に代表される不思議な世界は、絵本においてもその魅力が如何なく発揮される。『いろいろしかく』(1988年刊)や『まるまる』(1993年刊)では、造形の面白さを楽しく伝え、写真をベースに中辻の創作キャラクターをコラージュした『よるのようちえん』(文・谷川俊太郎、1998年刊)は第17回ブラティスラヴァ世界絵本原画展(1999年)でグランプリを受賞した。

 この展覧会は元永定正と中辻悦子の二人による初めての絵本原画展でもあり、子どもたちが楽しめると同時に、私たち大人が忘れがちな子ども時代の素直な心を喚起させてくれる。

 また元永定正は、今年11月が誕生月であり、米寿を迎えられたことも付記しておきたい。

 これからも元永、中辻お二人は絵本のお仕事は勿論、現代美術の制作にも引きつづきユニークな造形作品で、私たちを楽しませてくれるであろう。

もとなが さだまさ
1922年三重県生まれ。関西を拠点にする「具体美術」に所属、64年現代日本美術展で受賞したのをはじめ、各種国際展などで活躍。83年には日本芸術大賞、91年紫綬褒章、94年宝塚文化功労賞を受賞。名実共に日本を代表する抽象画家

なかつじ えつこ
1937年大阪府生まれ。阪神百貨店の広告デザイナーを経て63年東京で初個展以後、各地で個展を開く。人形のオブジェ、絵画、版画など多彩な分野で活躍し、98年現代版画コンクール展大賞、99年ブラティスラヴァ世界絵本原画展グランプリ受賞。

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