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三重県立美術館で開かれた 元永 定正 展

三重県立美術館で開かれた 元永 定正 展

日本を代表する抽象画家 元永定正の全貌に迫った展覧会

 1922年11月26日、私は生まれた。その時から自分が出来た。いま絵を描きながら自分の世界を追求している。平面、立体、パフォーマンスに絵本や文章も書く。音をつくる、歌唄う。みんな自分を表現している。自分の世界は自分で考える。自分の技術で作品をつくる。我流の世界ができあがる。
               元永 定正

 宝塚市在住の画家・元永定正さんの個展が、出身県である三重県の県立美術館で開催された。筆者もアーティスト・トークとパフォーマンスの行われる日に駆け付けた。

 美術館の展示は、「第1章 初期の抽象作品」に始まり、「第8章 《水》・インスタレーション」までの構成でもって元永さんの全貌を回顧した。

 美術館内のホールロビーの窓には、多数のビニールに入った着色された水が、外光に美しく輝き、私たち観客を色とりどりに迎えてくれた。ロビーに準備された椅子席は、元永さんのトークを待っている観客でもう既に満席。小一時間ばかりのトークは、笑いと納得の表情で包まれた。トークの後は、お待ちかねのパフォーマンス。200号位の6枚のキャンバスに、用意されたコップに入っている色とりどりの絵具を恰も無造作に投げ掛ける。バシャという音が聞こえるや否や、客席に驚きの声が揚る。これまた小一時間ばかり、元永さんは机の上のコップを手に幾度となくキャンバスに絵具を投げ掛ける。フラッシュが光り、拍手が起る。白地のキャンバスに絵具が上から下に向かって滴り落ちる。キャンバスの上をまるで生き物のように這う絵具。一見、偶然に思えるが、実際は偶然と必然の間を瞬時に思索した行為である。出来上がった作品は、迫力に溢れ、観る者を圧倒する。

 筆者は今回、「第7章 創作の背景の室」で、元永さんの想像の源泉を垣間見た。というのは、膨大な量の構想デッサンやメモの山を前にして、元永さんの恐るべき創作姿勢を再確認したからである。この貴重な資料展示は、初めてのことではないだろうか。出色の構成であり、改めて企画者の演出に敬意を表したい。

伊丹市立美術館 宮ノ前 072(772)7447

元永定正 プロフィール
 1922年三重県上野市生まれ。関西を拠点にする「具体美術」に属し、64年現代日本美術展で受賞したのをはじめ、各種国際展などで活躍。83年には日本芸術大賞、91年紫綬褒章、94年宝塚文化功労賞を受賞。名実ともに日本を代表する抽象画家。

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