架空通信を「作り手としての思いを多くの人に発信していくといった意味合いを込め」といったのは、先の阪神大震災(1995年1月17日)により不慮の死を遂げた津髙和一(1911~95)である。そんな津髙の架空通信を次代に継承すべく、2003年に架空通信忌が発足した。
さらに、一昨年は、“世代やジャンルを越えた様々な芸術分野の作家交流をめざす”を目的に架空通信忌が架空通信懇談会と改められた。それを契機に「架空通信『百花繚乱』展」と銘打って、兵庫県立美術館で開催されるようになった。国内外で作品発表しているベテラン作家から新人作家までの百数十名の参加を得て、昨年も開催された。
その中に元永定正、中辻悦子、森本紀久子、吉野晴朗、山本修司といった宝塚在住の5人の作家も参加していた。白の画布上部から紐で白い枕を吊るした元永定正、人間の存在や不在を考えさせられた。2人の顔に、丸や四角の目を布置した中辻悦子、作品を観ている私たちが、逆に作品に観られているような錯覚にとらわれた。色鮮やかで、鳥の羽根や魚の骨といったプリミティブなフォルムによる心象風景を描いていた森本紀久子。餅が焼かれ、膨れた様子を、餅の百面相に仕立てた、ユーモアに満ちたインクジェットによる作品だ。山本修司の「ちりよる」は、木々の枯葉が無数に集積している造形を4枚のパネルで構成し、ミクロの世界を造出していた。
展覧会は、現代に生きる作家たちのメッセージが提示され、今日の時代に息づくさまざまな芸術との出会いの場となり、まさに「百花繚乱」の趣を呈していた。