トップページ > 2007年02月号 >宝塚アート見聞記

宝塚の西谷へ、川合夫妻を訪ねて

宝塚の西谷へ、川合夫妻を訪ねて

 宝塚市の最北部、西谷に彫刻家川合敏久、画家季子夫妻が喧噪の大阪を離れ5年前からアトリエを構えている、自然の懐に抱かれた西谷。四季の移ろいの中で起居し、自然を観照し、自己と対峙し創作活動を行う2人。
 彫刻家川合敏久は、幼児期に祖父とよく魚釣りに出掛けたとか。その頃の体験が、後年の彫刻に活かされる。早くして父を亡くしたため、働きながら高校や大学に進学。そこで、働く人々の人情の機微にふれる。京都芸大の彫刻科では、人体デッサンに始まり、模刻などを経て、本格的に人体の造形表現に腐心する。なかでも、辻晋堂から多くの啓示を受ける。
 大学を卒業後しばらくは、抽象彫刻を手掛けている。そして、具象彫刻に転進。頭部や人体作品に、人間の内面を表現するといった難度の高い道を選んだ川合。私は具象彫刻が、技術のみが優れているだけでなく、作家の姿勢が反映される難しい表現だと考えている。
 さて川合は、京都時代に同志と、ともに結成したグループVOLに参加。そこで季子夫人と知り合い、結婚に至る。
 季子は、敏久とは逆に具象画から、近年は抽象画にも挑戦している。具象も抽象も表現行為は異なるが、作家の内面が作品に代弁される。即ち、作家としての哲学が造形化されるといっても過言ではないだろう。

▲川合敏久作「鱒と少年」(ブロンズ)

 彫刻家川合は、真摯な姿勢の作家である。肖像彫刻では、綿密に人物像を調査し、人間性を追究している。肖像は、如何に人間性を集約し、造形化するのかが、逆に作家自身の姿勢を問われることでもある。
 そんな律儀な敏久と長く生活をともにしてきた季子も二次元世界から三次元、四次元世界への拡がりを求めて画架と対峙している。季子も作品に、自身の内面を作品に具現化している。
 今後の宝塚・西谷での不断の創作活動が、多くの人に共感を与える作品が呈示されることを期待したい。
▲宝塚・西谷で制作活動をする川合夫妻

伊丹市立美術館 宮ノ前 072(772)7447

彫刻家 川合敏久と画家 川合季子

宝塚の情報誌ウィズたからづか

ウィズたからづかの最新コンテンツ