宝塚市の最北部、西谷に彫刻家川合敏久、画家季子夫妻が喧噪の大阪を離れ5年前からアトリエを構えている、自然の懐に抱かれた西谷。四季の移ろいの中で起居し、自然を観照し、自己と対峙し創作活動を行う2人。
彫刻家川合敏久は、幼児期に祖父とよく魚釣りに出掛けたとか。その頃の体験が、後年の彫刻に活かされる。早くして父を亡くしたため、働きながら高校や大学に進学。そこで、働く人々の人情の機微にふれる。京都芸大の彫刻科では、人体デッサンに始まり、模刻などを経て、本格的に人体の造形表現に腐心する。なかでも、辻晋堂から多くの啓示を受ける。
大学を卒業後しばらくは、抽象彫刻を手掛けている。そして、具象彫刻に転進。頭部や人体作品に、人間の内面を表現するといった難度の高い道を選んだ川合。私は具象彫刻が、技術のみが優れているだけでなく、作家の姿勢が反映される難しい表現だと考えている。
さて川合は、京都時代に同志と、ともに結成したグループVOLに参加。そこで季子夫人と知り合い、結婚に至る。
季子は、敏久とは逆に具象画から、近年は抽象画にも挑戦している。具象も抽象も表現行為は異なるが、作家の内面が作品に代弁される。即ち、作家としての哲学が造形化されるといっても過言ではないだろう。
彫刻家 川合敏久と画家 川合季子