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-バックナンバー- 2006年4月号

フェアリーインタビュー

3月24日から4月2日までの宝塚バウホール公演『スカウト』は、ハードボイルドとファンタジー、相対する味わいをもつミュージカル。4月25日付で宙組への移動が決まっている個性派二枚目スターの蘭寿とむ、二つの異なる世界の中で真実の愛を求め葛藤する男を巧みに演じる。

 3月24日、蘭寿とむさんが主演する宝塚バウホール公演『スカウト』の幕が上がる。

 蘭寿とむさんによる宝塚バウホール主演公演は、2002年8月にダブル主演した『月の燈影』、2003年3月に宝塚バウホール25周年記念として企画されたバウ・ワークショップの一つ『恋天狗』、そして2005年『くらわんか』があり、今回は4度目だ。作・演出は正塚晴彦。

 蘭寿とむさんが演じるのは、ダンサー兼振付家のショーン・フィンリー役。ショーンは人気クラブのステージを任されている。

 物語の発端は、舞台での事故。頭に重傷を負ったショーンの蘭寿とむさんは、生死の境を彷徨う。辛うじて命をとりとめ、長い眠りから覚めると、世の中が以前とちがって見えるようになっていた。
 世の中に対してちょっとした違和感が生まれる瞬間は、誰にでもあることだが、ショーンの場合はなぜか悪魔のような男の存在が見えてしまう。その男が、恋人ジェシカのあとを、影のように追っていくー。果たして、これは現実か、夢か。

 数ある宝塚歌劇の中でも、正塚ワールドの男役たちは、現実にうまく着地していて、肩が触れ合う距離にいるような愛しさを感じさせる。けれども、男役が演じる男たちは決して私たちの隣には存在しない。そのことを私たちは百も承知の上で、劇場の中に咲く甘美な夢に身をゆだねるわけだが、夢を楽しんだあとに直面する現実は、何といっても夢が現実に近いほど残酷だろう。
「ダンサーで振付家の役というだけで、ファンの方たちは、観たい、と楽しみにしてくださっています。ハードボイルドとファンタジーという、相対する味わいをもつミュージカルなので、またどんな自分が生れるか。花組生としては最後の舞台でもありますので、いろんな意味で自分に期待したいと思います」

 蘭寿とむさんは、1996年3月、『CAN―CAN』で初舞台を踏んでから、ずっと花組での活躍が続いた。入団11年目に巡ってきた初めての組替えは、宙組への移籍。4月25日付なので、話題の和央ようか・花總まりのサヨナラ公演『NEVER SAY GOODBYE』には出演せず、宙組三代目トップ貴城けいのお披露目となる博多座公演『COPACABANA』から。

「『落陽のパレルモ』『ASIAN WINDS!』の東京公演中に組替えをお聞きして、かなり驚きました。花組に10年もいるので、もうずっといるんだろうなと思っていましたから。花組の人たちと別れる寂しさはありますが、宙組で自分の中に何が生れるかわからないという期待感が大きいです。花組で学んだことを基本に、新しい空気を感じて、いろんな自分に出会いたい。すべてが楽しみです」
らんじゅとむ・1996年『CAN-CAN』で初舞台。花組に配属。早くから存在感のある新人男役として注目される。2001年『ミケランジェロ』で新人公演初主演。02年バウホール公演『月の燈影』では彩吹真央と共にバウ初主演。06年4月25日付で宙組へ組替え。兵庫県出身/愛称・とむ

花組最後の舞台、「スカウト」に出演する蘭寿とむさん
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