凰稀かなめさんが出演する、雪組トップスター朝海ひかると娘役トップ舞風りらの同時退団公演が、9月22日から宝塚大劇場で始まる。
Musical Fantastique『堕天使の涙』と、レビュー・アラベスク『タランテラ!』の2本立てだが、どちらも宝塚歌劇の御家芸の一つ、人間以外の生き物が主役である。
そもそも宝塚歌劇の男役自体が、幻想つまりファンタジーなのだから、人間以外の生き物を主にした舞台づくりはお手のものなのだが、それにしても2作揃ったのはトップ朝海ひかるが放つ強いファンタジー色のせいだろう。
凰稀かなめさんの魅力の一つも、そんなファンタジー色にある。
『堕天使の涙』に登場する堕天使は二人だけ。トップ朝海ひかるが演じるルシファーと、凰稀かなめ扮するサリエルだ。
堕天使は姿こそ人間だが、その謎めいた存在と悪魔的な魅力で人間の心を虜にする。演技を超えたファンタスティックな存在感がなければ決して成立しない、特別な役なのだ。
「まだこの世に人間が生まれていなかった頃、堕天使は神に愛される天使でした。ところが神が人間を創って愛すようになったため、ルシファーは反乱を起こし、怒った神に地獄に落とされてしまいます」
人間に姿を変えた堕天使は、神に復讐するため人間界へやってくる。
「私が演じるサリエルはルシファーのしもべです。コムさん(朝海)と二人だけのお芝居もあり、たくさんご一緒させていただくので、コムさんをずっと見続けて、いっぱい吸収できればと思っています」
本公演に出ずっぱりの活躍ぶりだが、それだけではなく、新人公演でも主演する。
「私にとって最後の新人公演で再び主役をさせていただくことになり、ファンの皆様からもおめでとうと言って頂きました。天使を演じるに当たり、どういう生き物なのか資料を調べてみると、マシュマロが好きだとか、色んな説があって面白いですね。人間の喜びや不幸、あるいは空の雲を食べているのでは、など自分なりに想像をふくらませています」
数ある情報の中から徐々にイメージを絞っていき、凰稀かなめのサリエルが、そしてルシファーがつくられていく。
7月には500人劇場のバウ・ワークショップで主演し、「燃え尽きた」という凰稀かなめさん。大きな経験をしたあとだけに、期待が大きい。
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