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-バックナンバー- 2005年8月号


年月の経つのは早いものである。1998年、宙組が発足して宝塚歌劇団が5組制になった時の驚きと感動は昨日のことのような気がするが、その翌年に初舞台を踏んだ85期生からもう大型の若手スターが育っている。星組の柚希礼音さん。172センチの長身。高々と上がる長い脚とターンの早さは、クラシックバレエ出身の男役の中でも際だった存在だ。

 柚希礼音さんは抜擢されるのも早かった。初舞台の雪組公演『ノバ・ボサ・ノバ』、続演の月組公演『ノバ・ボサ・ノバ』の新人公演で出世役として知られるドアボーイを演じたのだ。星組配属後、2000年には各組から選抜されたドイツ・ベルリン公演のメンバーとして、ヨーロッパ最大のレビュー専用シアターであるフリードリッヒシュタット・パラスト劇場の舞台に立った。

「バレリーナになる夢は身長が高くなりすぎて諦めました。毎日踊れる劇団があると聞き、宝塚のことを知りましたが、お芝居もするということが今一つ理解できていなくて、音楽学校で初めて芝居の授業を受けたときはすごく恥ずかしかったです。海外公演にしても滅多に行けるものではないと知らず、ただ夢中で楽しんでいました」

まだ研3になる前の01年1月、柚希礼音さんは『花の業平』の新人公演でもう、準主役の梅若を演じた。02年には第2回中国ツアー公演メンバーとして、再び海外へ。新人公演初主演は03年、ヴェルディの「アイーダ」をもとに歌で綴った大作『王家に捧ぐ歌』のラダメス役だ。

「物語も役も大好きで、とても幸せでした。この作品も含めて星組はコスチューム物が多かったので、次の『1914/愛』新人公演では頭を打ちました。でもそれがよかった」

主役アリスティド・ブリュアンは社会の底辺に蠢く人たちの心を歌い続けた歌手。ラダメスで着たきらびやかな衣装は、アリスティドでは1枚もない。「それまでもたくさん壁にぶつかって悩んできましたが、アリスティドの生き方を考えれば考えるほど深みに嵌るようでむつかしかったです。まだ経験の少ない自分の引き出しの中身は限られていますが、新人公演には本役さんというお手本があります。大先輩が1ヶ月間お稽古されて舞台に立っていらっしゃるので、まずその実りの中からできるだけたくさん学ばせていただき、それから自分なりの役づくりをした方が勉強になるのではないかと考えました」

 

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