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-バックナンバー- 2005年6月号


「小学生の頃からの大ファンで、前売りに並んだり、楽屋入り待ちや、出待ち、立ち見、ディナーショーなど、ファンとしてのあらゆることを経験しました。だからファンのかたの気持ちはとてもよくわかります」
 宝塚ファンといっても、浅い関わり方もあれば深い関わりかたもあり、その活動はさまざまだ。だが、ファンの楽しみをすべて享受していても、こんなにストレートに伝えるスターもめずらしい。星組の涼紫央さんの熱情の、なんとさわやかなこと。

宝塚歌劇の舞台に立つための唯一の道である宝塚音楽学校へは、どんなことをしても入学したいと思ったという。
「大阪梅田の阪急百貨店の1階で大声で課題曲を歌ったら合格すると言われたら、きっと迷わずに歌いました(笑)。合格発表の様子を見ると、今も涙が出るんですよ。合格して泣いている人の気持ちもわかるし、落ちて泣いている人の気持ちもわかる。私も悔し泣きしましたから。受かった時は、これほど自分の人生が変わることは一生、もうないだろうと思うほど感動して。夢は見続けたら必ず叶うという信念ができたし、叶わない時でも、ずっと思い続ける根性ができたことは自分の人生にとって大きいです。好きなことができるのは幸せ。忙しいのは何よりうれしいことなんですよ」

今年は4月に全組のスターが揃う『TCAスペシャル』の稽古が加わる。出演者にとって多忙な時期だ。涼紫央さんは5月13日に初日を迎える星組宝塚大劇場公演『長崎しぐれ坂』『ソウル・オブ・シバ!!』の稽古中。ふだんの生活も宝塚一色です、という涼紫央さんだが、まさに家に帰っても役と取り組み続ける日々なのである。

「『長崎しぐれ坂』は榎本滋民氏の『江戸無宿』を植田紳爾先生の脚本と演出でお見せする作品。私は[らっこ]というあだ名の凶状持ちを演じます。頭は5分刈り、胸にはさらしを巻くので、勉強のために勝新太郎さんの座頭市を見ました。これまでにない新しい自分を引き出せるのは楽しみですが、江戸時代の男性を演じるのはむずかしいと言われる意味がすごくよくわかります。平安時代はお衣装も美しいし、雅な男は宝塚歌劇の男役によく似合うけれど、対照的に、粋で男らしい男は男役の経験がもろに出てしまうんです」

大先輩の轟悠が特別出演し、円熟した男役の芸を見せる。涼紫央演じる[らっこ]の親分、無宿者の凶状持ちだ。子分役には、ほかに安蘭けい、真飛聖、柚希礼音がいる。日生、バウ、新人公演の主演スターが、それぞれに江戸時代の男、しかも裏街道に生きる凶状持ちをどう演じるか、正念場でもある。

 

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