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-バックナンバー- 2005年5月号
宝塚歌劇団 大きな役がきた時に、チャンス、と思ったのでは遅い。ふだんから、スポットライトを浴びない役も確実に自分のものにしていく。その積み重ねが、やがて大役を与えられた時に活きる。研4で新人公演の準主役にいきなり抜擢された時のこと。元来は上がり症だという未涼亜希さんだが、舞台袖から一歩踏み出した瞬間に、不安がいい緊張に変わったという。

「稽古場で一度もやったことのない、男役としてのさりげない仕種が自然にできたんです。舞台の力ってすごいなと思いました」

タカラジェンヌとして生きていることが、生身の一人の人間に戻った時に役立つこともあれば、逆に、ふだんの生活で得たことが舞台に活かせることもある。

「『La Esperanza』の大劇場での新公が終わった時に、まだまだ自分の課題は歌だなと思って、すごく落ち込みました。この作品は自分にとって最後の新公だったし、歌もダンスも芝居も多く、まず身体の中に入れるまでに時間がかかったんです。その中でも歌は1番早く取り組んだのにと、辛かった。その時、希望の大切さを歌った主題歌の歌詞が、ああこの気持ちなんだとすごく理解できて、役者としていい経験ができました」

昨年5月、宝塚バウホール公演『NAKEDCITY』で演じた新米記者バーナードは、ちょっと三枚目的な部分のある、憎めないかわいらしい男だった。未涼亜希さんの得意技の一つである。

「正直いって、やりたいようにやらせていただきました。暗い過去をもって思い詰めたような人たちの中で、バーナードだけがこれからの人生を歩んでいく。いまの花組公演『マラケシュ・紅の墓標』でも、どこか抜けたところのある弁護士の役を演じます。お客様にホッと息を抜いていただく役目ですね」
 続いて上演される『エンター・ザ・レビュー』は、男役だけのダンスシーンで幕が開く。多くのトップスターを輩出してきた花組らしい、魅惑的な場面だ。

「まだまだ自分の中に眠っているものは数知れずあると思います。たぶん退団するまで、それを探し続けるのではないでしょうか。歌もダンスも芝居心が必要ですし、与えていただいた役には歌とダンスと芝居の三拍子で応えていきたい。とにかく舞台が好きなんです」
 
なかでも日本物には、なぜかわからないが、特に魅せられるものがあるという。ストイックに剣の道を行く孤独な美剣士に、憧れている。

※次号のフェアリーインタビューは、星組の涼紫央さんの予定です。



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インタビュアー  名取千里(なとり ちさと)  
 (ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局 /宝塚NPOセンター理事  

主な編著書   
「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)   
「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)  
 「仕事も!結婚も!」(恒友出版)