この夏、月組の新トップスター瀬奈じゅんさんが主演した梅田芸術劇場オープニングシリーズ公演『Ernest in Love』は連日、3階席の後方まで観客でいっぱいになった。大阪梅田で宝塚歌劇が3週間に亘って公演したのは初めてのことだ。
「とてもいい劇場でした。お客様の活気が感じられたのが、すごくうれしかったです。みんなで3階の後ろまでパワーが届くようにがんばったことで、劇場空間を使う勉強になりましたし、下級生は目線が上がってきたのではないかと思います」
宝塚らしい華やかな賑わいをもたらして、新トップのすばらしいスタートを切った瀬奈じゅんさんは、続いて東京の歌舞伎座で同作品のダイジェスト版を演じた。
「初めて花道から登場させていただき、お客様の頭の近くを歩くのがちょっと気が引けましたが、歌舞伎ファンの方々に宝塚歌劇の世界をご紹介できて、いい経験になりました」
そして、待望の宝塚大劇場でのお披露目公演『JAZZYな妖精たち』『REVUE OF DREAMS』の稽古が8月11日、スタートした。
「『JAZZYな妖精たち』は谷正純先生のオリジナル作品で、主人公をはじめほとんどの登場人物が妖精の存在を信じているというファンタジーなのですが、お話自体はとってもリアルで深いんですよ」
1992年に初舞台を踏んだ瀬奈じゅんさんが新人公演で初主演したのが98年、谷正純脚本・演出による『SPEAKEASY』だった。
「この時、谷先生が、新人公演の主役は全員の中で1番輝いていなければ嘘だ、とおっしゃったんです。その一言がすごく大きかった。それ以来、主役でなくても、いつも輝いていなければと思うようになりましたね」
ますます注目度が増した瀬奈じゅんさんは、宝塚歌劇が88周年を迎えた2002年4月、日生劇場公演『風と共に去りぬ』のスカーレットに抜擢された。男役の瀬奈じゅんさんにとって初めての女役。しかも雪組との役がわりで、出来上がった作品にあとから加わるプレッシャーもあった。
「初日があいて3日目くらいに次の東京公演『琥珀色の雨にぬれて』の代役公演が決まって急遽、準主役のルイ役を演じることになりました。もともと日生劇場の出演者は東京公演の稽古が5日間しかなかったのですが、スカーレットを演じながらジゴロのルイの台詞は絶対に覚えられない。器用ではないから。でもスカーレットの莫大な台詞を覚えた自信があったので、千秋楽後、宝塚に戻り1日で覚えて稽古に臨みました。私だけではなく彩吹真央も蘭寿とむも日生劇場出演組は、何かが降りていたように振りも位置も1日で覚えました。あの経験があるから、今できることがあるのだと思います」
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