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-バックナンバー- 2004年2月号

 目を射る強い眼差しが突然、天使のような笑顔に変わる。孤独と、天真爛漫な素顔。蘭寿とむさんがそれら二つの表情を行き来するたびに、どこか捉えどころのない不思議な魔力を感じてしまう。これが生まれながらのスターの光か。

 1996年、1番の成績で入団した蘭寿とむさんは、初舞台『CAN―CAN』の初日に口上を述べた。「すごく緊張しました。一人のファンとして宝塚歌劇を観ていた時は、自分が立てるようなところではないと思っていましたので、感動しました」

 その宝塚歌劇が90周年を迎えた2004年1月1日、花組宝塚大劇場公演『飛翔無限』『天使の季節』『アプローズ・タカラヅカ!』の幕が上がった。

初舞台後に花組に配属となった蘭寿とむさんは、この世界的な記念公演に出演中だ。
「宝塚らしい舞台を、お正月から晴れやかにつとめさせていただいています」

 祝典喜歌劇『天使の季節』では初めて娘役の衣装を着て、周囲をかき回すコミカルなジョルジュ役を演じている。快活さは蘭寿とむさん生来の魅力。が、何といってもエンビ服で勢揃いした男役のダンス場面は圧巻で目が離せない。
「中学生の頃からファンで、特にショーの1場面を観るためだけに大劇場に通っていましたから、たとえばエンビ服を着て1列に並んだ時など、歴代のスターダンサーの方たちの姿が思い浮かび、気持ちが引き締まります。自分の中で一つ、神経が入れ代わるというか、体全体が自然にその状態になりますね。お稽古場でも空気感が変わる感覚は、下級生の頃からすごく感じてきました。エンビ服でのダンスの美しさには言葉にできないものがあります。エレガントで、無駄な動きがない美しさ。体の角度も大事です。一糸乱れぬように揃えますが、花組では個性を加味した上での一体感が求められている気がするので、自分なりのダンスを踊るようにしています。今回も、こういうダンス好きだな、と思いながら、楽しんで踊っています」

 小学生の頃クラシックバレエを始めた蘭寿とむさん。スラリと伸びた170センチの長身を生かして男役に。でもはじめのうちは、「体のライン一つで女っぽくなったり、手足の表現が幼かったりして、しょっちゅう注意されていました。男性の気持ちを理解するのも難しいし、どうしたら男役になり切れるのかと迷った時期がありました」

 そんな時に男っぽい色濃い役が続いた。
「こういう感じかな、と手探りでやっていくうちに、少しずつ男役らしくなってきたように思います」

 

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