バックナンバーへ|TOP
-バックナンバー- 2004年2月号

  最下級生で出演メンバーに選ばれた武道館での『真矢みきスーパーリサイタル』、5組の選抜メンバーで重責を果したドイツ・ベルリン公演。2001年には、『ミケランジェロ』の新人公演で主役に抜擢された。

「無我夢中でした。ミケランジェロの役が芸術に没頭する役。まさにその通りに突き進むしかなく、初めて経験するスポットライトの強さや銀橋で歌う緊張も、若さの勢いで跳ね返してやろうという気構えで臨みました。気持ちが萎縮するとすべてが小さくなってしまい、ミケランジェロの大きさが出せません。今でこそ必要に応じて計算やエネルギーの配分をしますが、当時はそんなことなど全く考えず、全力でぶつかっていった思い出の舞台です」

 次の新人公演『琥珀色の雨にぬれて』にも主演。本役のジゴロとは対称的な公爵のクロードに扮し、心情を濃やかに演じた。そして、あの新人公演『エリザベート』。トートを演じきった蘭寿とむさんの目の前で、拍手に押し上げられるように緞帳がスルスルと上った。新人公演で初めて観客が総立ちとなったアンコールの瞬間だった。

「メンバー全員で一つになろうと体当たりでがんばってきましたので、充実感がありましたし、もう一回幕が上がって感動しました。新人公演を含めると私は8人目のトートで、自分にしかないものを出したかったのですが、歌の量も多くプレッシャーもあって、大劇場では創り込みが足りませんでした。東京では、最後に銀橋でエリザベートへの思いを歌うところで、エリザベートを愛してやまないトートの心情に入り込めたのを感じて、ようやく一山越えたという実感がありました」

その直前、蘭寿とむさんは宝塚バウホール公演『月の燈影』に彩吹真央さんとダブル主演している。

2003年10〜11月の全国ツアー『琥珀色の雨にぬれて』『Cocktail!』では準主役を務め上げた。

「本名の自分が豊かなものをもって魅力的な人でありたいという思いで、宝塚に入りました。自分が輝いていると、役も光ってくると思います。行き詰まったり、谷底から抜け出せないような苦しい時に、ただ止まってしまうのではなく、少しずつでも前に前にと出て行ける精神力を、信じていきたいです。新人公演を卒業して本公演だけになっても、時間の余裕がないほどいろいろなものを与えていただき幸せに思います。これからさらに飛躍していきたいです」

 後輩に対しては、冗談を言ってよく笑う、気さくな上級生である。歴史ある花組の伝統を受け継ぎ、100周年へと大きく飛翔してほしい。

-ホームページトップへ-

インタビュアー  名取千里(なとり ちさと)   (ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局   /宝塚NPOセンター理事   主な編著書   「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)   「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)   「仕事も!結婚も!」(恒友出版)