東京宝塚劇場花組公演「野風の笛」に豊臣秀頼役で出演中の彩吹真央さんは、1994年3月の花組公演「火の鳥」が初舞台である。
今年は入団10年目という大きな節目の年。これからますます艶のある二枚目男役の活躍に期待がかかるなか、彩吹真央さんは7月、ホテル阪急インターナショナル恒例の「パリ祭」で初めてディナーショーの中心を務めた。
「単独ではなくてダブルですが、自分が主でディナーショーをさせていただくのは初めてだったので楽しかったですね。お稽古に入る前に演出家の先生が希望を聞いてくださったので、もし歌わせていただけるならどんな曲がいいかなと、CDからいくつかピックアップして提出しました。意外にも全部採用していただき、特にソロでは気に入ったものを歌わせていただけることになったのですが、すべてシャンソンなので、曲ごとに、歌い方の違いをしっかりと出さないと、どれも同じように聞こえてしまいかねない難しさがあり、歌うことは大好きで楽しいのですが、結果を出すまでにはまだまだなのだと思い知らされました」
彩吹真央さんは下級生時代から安心して観ていられるスターだった。彩吹真央さんがつくりだす物語の世界に、いつのまにか集中させられてしまうのだ。”できる人”というイメージにプラス、若手の中ではめずらしく大人っぽい雰囲気があって、目立っていた。 特に歌唱力では昨年、「エリザベート」で演じたルドルフ。 ハプスブルク家の皇太子ルドルフが絶望して死ぬまでの精神の起伏を、わずか15分間のうちに凝縮して演じきった集中力はすばらしく、歌、ダンス、芝居のすべてにおいて実力を証明した舞台だった。 「舞台に出る前には、どんな小さな悩みでも個人的な思いはすべて閉じ込めます。それらを絶対に舞台に出さない精神力は、演技者にとって必要なんです。もう一つ、ルドルフを演じて実感したのは、特に実在の人物を自分の肉体で表現する場合、生身の自分自身の心が揺れていたら、お客さまに何も伝えられないということです。 迷いがなくなるまで人物像を掘り下げていき、思い切って演じる。その人物として生き続ける。そうでないと、お客様に伝えられないことがわかりました」
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