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-バックナンバー- 2003年6月号

 優秀な成績で入団した人にも芸の道の壁は容赦なく立ちはだかる。過去、1番の難関は?
「舞台が好きという思いでずっと突っ走ってきましたが、新人公演を卒業した後に、好きだけではだめ、好きな気持ちも大事だけれど、それにプラス、もっと自分を創り上げて見せていく部分が必要なことに気づいたんです。自分らしさがわからなくなり、自分を見失ってしまいました。それが過去、経験した最大の壁です」
 注目株の同期2人が雪組に移ってきて同期3人の競演が始まったのは、そんな時だった。
「同期がいたから乗り越えられた部分は大きいのですが、一方で、自分の力不足を思い知り、それを精神的に乗り越えるのに時間がかかりました。落ち込むだけ落ち込んで、はい上がってくるんです。がんばれば先できっと御褒美が待っている、そう言い聞かせ、一筋の光を見つけました」。
 やがて転機が訪れる。星組への移籍、2番手の活躍が始まった。それから2年。『ガラスの風景』のミラー警部役で新境地を拓く。 人生を背負った大人の男が、そこにいた。
 いま男役・安蘭けいの魅力を自己解明すると、「ソフトなイメージで押し通したかったのですが、本当はそこから少しはみ出る自分がいます。これまで創造してきた自分を壊して、一皮剥ぎ、本来の自分を隠さずに出していく、それが、これからの安蘭けいにとっていいことなのだと思います」
 7月、新生星組公演『王家に捧ぐ歌』で安蘭けいさんが演じるのは、なんと王女アイーダ。ヴェルディのオペラ『アイーダ』の宝塚版で、タイトルロールに匹敵する重要な役。
 12月にはバウホール公演『巌流』に佐々木小次郎役で主演する。
「何度観てもおもしろいと思っていただけるように、いつも新鮮な気持ちで舞台に立ちたいです」
 真剣勝負に賭ける安蘭けいさんの、芸の魔力に見惚れずにはいられない。

 

 

 

 

インタビュアー
 名取千里(なとり ちさと)

  (ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局
  /宝塚NPOセンター理事
  主な編著書
  「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)
  「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)
  「仕事も!結婚も!」(恒友出版)

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