5月6日から27日まで、星組の安蘭けいさんがミュージカル『雨に唄えば』に主演する。
『雨に唄えば』といえば1952年にジーン・ケリー主演の映画が大ヒットした。ストーリーを知らなくても『SINGIN IN THERAIN』の軽快なメロディーは、たくさんの人が聞いているはず。舞台化は83年のロンドン版、85年のブロードウェイ版がある。
「主役のドンをさせていただくと決まってから映画を見ました。ジーン・ケリーはすごいダンサーだと思う。 当時、40歳くらいだったそうですが、成熟した大人の包容力があって人間の大きさを感じました。宝塚版ではもっと若くなりますが、若いなりに懐の深さを何とかがんばって出したいですね」と、意欲的に話す安蘭けいさんは、男役13年のキャリアをかけて取り組んでいる。一見、淡々として見えるけれども、実は芳醇なワインのように、とても味わい深い人だ。
「お話をいただいた時、これまで自分なりにやってきたことが間違いではなかった、無駄ではなかったという喜びでいっぱいでした。その後、周りの人たちから日比谷の日生劇場で主演するのはすごいことなのよと言われて、そうか、大変なことなんだなと。今はプレッシャーもありますが、私はミュージカルに憧れて入団したので、これがやりたかったのだと毎日、うれしい気持ちで稽古しています。」
　昨年４月、日比谷の日生劇場に宝塚歌劇が初進出し、1ヵ月間、公演した。隣接する宝塚歌劇専用の東京宝塚劇場と観客を取り合わないかという懸念もあって大冒険だったが、芸術祭演劇部門優秀賞受賞者の轟悠主演『風と共に去りぬ』は、第12回日本映画批評家大賞ミュージカル大賞を受賞し、東京の二劇場で長期に亘る宝塚歌劇同時上演企画は大成功した。安蘭けいさん主演『雨に唄えば』は、その第2弾である。新人公演の主演4回、バウホールでも2回主演している安蘭けいさんだから、たくさんの期待と注目が集まるのは当然として、「うれしい」という彼女の言葉は新鮮に胸に響いてくる。本音が聞けて、こちらもうれしくなる。
　2年前の取材の折り、「まだ未知の自分がいる気がするので新しい発見をしていきたい」と言っていた安蘭けいさん。
「未知の自分との出会いはいっぱいありました。でも人に言うことではないと思うのです。舞台での私を見て下さい」と、これも直球。
　でも、そう言われると、知りたい気持ちが一層、強くなる。
　星組の新トップ湖月わたるさんが率いる全国ツアー公演組と二手に分かれての稽古場で、集合日、下級生に向けてどんな話をしたのだろう。
「専科の方もいらっしゃるので私からは特に何も話していません。38名の出演者のうち下級生が多いので、本当は手をとって教えてあげなければいけないのでしょうが、私はあまり面倒見がいいタイプではないのです。今回はその余裕もなく、まず自分がやれないと示しがつかない。私の稽古姿を見て勉強してくれればと。でも下級生はみんな、すごく楽しく取り組んでいるので心配はしていません」