バックナンバーへ|TOP
-バックナンバー- 2002年6月号

 初舞台生がラインダンスでお披露目するのは、春の宝塚大劇場公演だけである。
 今春は、新生星組披露公演が第88期初舞台生48名を迎え、総勢117名で幕を上げた。お披露目が二つ重なった本拠地の春は特別、麗しく、たくさんの花が咲き誇っている。
 星組公演『プラハの春』『LUCKY STAR ! 』に出演している朝澄けいさんは、初舞台生と一緒にお稽古した日々を振り返り、まぶしそうな表情になる。
 「初舞台生たちは気持ちが真っ白で、すごく純粋です。まだ知らないことがいっぱいで、『教えて下さい』 と目で必死に求めているのがよくわかる。今のハングリー精神を持ち続ければ、自分なりに掴めるものがきっとあるはずなので、がんばってほしいです。私自身も、もう一度、初心に戻ってやっていこうと思っています」
 宝塚歌劇が80周年を迎えた1994年3月、『火の鳥』で初舞台を踏んだ朝澄けいさんは今年で研9の男役だ。37.6倍の難関を突破して宝塚音楽学校に入学した優秀な第80期生で、同期には花組の彩吹真央、月組の霧矢大夢、宙組の久遠麻耶らがいる。
 朝澄けいさんの舞台姿は何度も観ているが、取材をさせていただくのは初めてなので、音楽学校を受験したキッカケからお聞きする。
 「宝塚歌劇が大好きな友達に誘われて東京宝塚劇場で初めて観たのが、宝塚との出会いです。その時はまだ出演者が女性だけということも知らなくて、ただ華やかな舞台にびっくりしました。そのあと、観劇に誘ってくれた友達が、『宝塚音楽学校を受けようと思うんだけど、一緒に受けない?』と。私も興味をもち始めていたので、どんなところか見て見たいと、本当に単純な気持ちで願書を出したんですが、何しろ短期間しかレッスンしていなかったので、受験当日、みんながウオーミングアップするのを見て、すごいと圧倒されて。特技を見ていただく場面では、トウシューズをはいてクルクルクルと何回転もできる人がたくさんいて友達と二人、 『帰ろうか』って話しました。でも逆に必要以上にドキドキすることがなく、最後まで楽しんでいましたね」
 予科・本科を経て同期生39名と入団した翌年、星組に配属になり、宝塚大劇場公演大震災復興第1作『国境のない地図』に出演した。そして96年、『エリザベート』の新人公演で少年時代のルドルフに抜擢され、99年『WEST SIDE STORY』の新人公演では主役トニーを演じた。ルドルフもトニーも、特に歌唱力が求められる役である。
 「自分にとって宝塚に受かるというのは奇跡的なことという思いがありました。下級生の頃は、どんなにがんばっても、新しい課題が次々に押し寄せてきて、舞台を楽しむというよりも、一つひとつ地道にやっていくしかなく、目の前の与えられた事をやるだけで精一杯でした。 最近、 強く思っていることは、 いつも上級生が手をさしのべてくださったということです。 本当にたくさんのことを教えていただきました。感謝するだけではなく、 これからは自分が下級生に手をさしのべていきたいと思うんです。

次へ