「それぞれが少しの勇気をもてば、確実に状況を変えられるんですが、なかなか踏み切れず、心の中でもがいている。そんな時、ステファンの前に映美くららさん扮するピアニスト志望の少女エヴァが現れて、エヴァの脳血管腫の難手術に踏み切るステファンは、脳外科医のプライドを取り戻していきます。そんなステファンに影響を受けて、ブリスも夢を掴むための第1歩を踏み出す。そのブリスの変わり具合が出ていたらいいなと思っています」
　原作はフランス映画の鬼才アレクサンドル・アルカディ。1995年にジャン・ユーグ・アングラードが主演した映画「世界で一番好きな人」をモチーフに、石田昌也が脚本と演出を担当している。座付の作・演出家である石田昌也は、宝塚歌劇としてはリアルな娯楽作品に仕立てるのがうまい。今回も、重いテーマながら随所で巧妙に息をつかせる。
　「深い内容の話ですが、その中でも私は弁護士のフローレンス女史を演じる大空祐飛さんと二人でコメディタッチの部門を受け持っている感じですね。ブリスはフローレンスをひそかに好きで、二人のシーンが何度かあるんですよ」
　『ガイズ＆ドールズ』でも男役の霧矢大夢が扮する踊り子アデレイドとラブラブだった大和悠河さん。
　「次は私が女役を演じる番かなと。でも何か男役さんが演じる女役と組むのは、娘役さんとは全然ちがった感じがするものですね。ずっとリアルさもあるし、男役経験者ならではのパワフルさもある。こちらもいつもとはちがう部分が出せるように思います。 月組は紫吹さんを中心に、汐美さん、霧矢さん、大空さんほか個性のある人たちが揃っています。私も舞台でもっと自分の色や個性を出すようにしたい。それが課題です。そうすることで組全体が更にまとまり、舞台がよりよくなればいいなと思います」
　大和悠河さんの最新の輝きが併演のレビュー『With a Song in my Heart』で見られる。リチャード・ロジャース生誕100年記念作品として、岡田敬二が作・演出した、ミュージカル・ナンバーの醍醐味に満ち溢れる華やかな舞台だ。
　11月15日からは東京宝塚劇場でも上演されるが、その前に、大和悠河さんにとって単独で初めてのディナーショーが開催される。これも絶対に見逃せない。