21世紀に入って、宝塚歌劇団では5組中、3組のトップスターが交替した。先陣を切ったのが月組の紫吹淳さん。まさに新世紀のタカラヅカを背負って立つ大役を担ってのスタートだが、2002年1月1日、ブロードウェイ・ミュージカルの傑作「ガイズ&ドールズ」で、宝塚大劇場でのトップお披露目公演を迎える。
「初笑いしていただけるような舞台にしたいですね」
この、プレイボーイのギャンブラーとお堅い救世軍の女性が繰り広げるウィットに富んだ陽気な恋物語が、ブロードウェイに初めて登場したのは1950年だった。たちまち大ヒットし、55年には映画にもなって、スカイをマーロン・ブランド、ネイサンをフランク・シナトラ、サラをジーン・シモンズが演じた。84年には日本で初演され、これが宝塚歌劇団月組による公演だった。
「大地真央さんがスカイを演じられたそうですが、私は宝塚音楽学校生だったので観ていないんです。今回、同じ月組でさせていただく巡り合わせに運命的なものを感じています。当時の思い出が蘇るお客様もいらっしゃるでしょうが、2002年バージョンと言うことなので、初演の良さを引き継ぎながら今の時代の舞台を月組のみんなと一緒にがんばって作りたいと思います」
ミュージカル・コメディの傑作中の傑作「ガイズ&ドールズ」がようやく、再び宝塚の舞台に登場することになる。一本立て2時間半の長丁場を、ユーモア溢れるミュージカル・コメディで見せる紫吹淳さんへの期待はとても大きいのだ。
紫吹淳さんの芸風は堂々としている。海のように大きい。が、その存在は不思議に体重を感じさせない。羽毛のように自由で軽やかなのだ。その変幻自在ぶりに、観客はどれほど心地よく酔わされてきたことか。騙される事を望むものにとって、完璧な嘘ほど心ひかれるものはない。
思い返せば2001年1月1日、新東京宝塚劇場のこけら落とし公演「いますみれ花咲く」「愛のソナタ」に出演した紫吹淳さんは、祝舞を春日野八千代、真琴つばさの3人で雅に踊った一方で、浪費家で女ったらしのオックス男爵を軽快に演じてみせた。
「みんなから『お正月なのに、そこまでやっていいの、ファン減るよ』って言われましたが、花組時代には私、もっとコミカルな役をやっていたんですよね」
紫吹淳さんの引き出しの中には96年「花は花なり」で演じた風丸の、とぼけた味と絶妙の間合いがあったのだ。この時の大劇場公演を最後に10年間過ごした花組から星組に移籍した紫吹淳さんは、97年「誠の群像」の勝海舟で絶賛を浴びた。同11月、東京宝塚劇場公演「EL DORADO」から月組2番手になり、めざましい活躍が始まった。
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