まだ研4だった94年、
ロンドン公演に参加し、 ハードスケジュールを経験。 初めてホームシックにかかったそうだ。
ロンドンにはその後、 『ウエスト・サイド・ストーリー』 を観に行く。
冬の季節で街全体が暗く、 宝塚公演をしたのは7月のすばらしい季節だったとなつかしく思い出す。
だが、 あの年は世界的な猛暑で、 ロンドンも異常な暑さだったはず。
「暑かったです。 でも、 いい季節でした。 海外はどこも好き。 ニューヨークでは必ず舞台を観ます。
次はイタリアへ行ってみたいです」
問いかけた言葉がストレートに彩輝さんの胸に吸いこまれていく新鮮な驚きが、
聞き手の側に残っている。 綻びのない端正な顔立ちと表情。 その奥には赤い血がさらさらと流れているんだなと納得。
人間のあたたかさを感じさせる魅力的な人だ。
96年、 星組に移籍した彩輝直さんは 『二人だけが悪』 の新人公演で初めて主役を演じた。
『エリザベート』 の新人公演も黄泉の帝王トート役で主演。 97年 『誠の群像』
の加納惣三郎役では、 「それまでは男役として男っぽさが足りないのではという迷いがあったのですが、
男色の惣三郎を演じて、 ふっきれました」 と新境地を拓いた。
「出会った役がキッカケで自分の内面が生まれ変わるように感じることがあります。
私はたくさんありました。 出会った人によっても自分がもう一段、 大きくなれると思います。
『WEST SIDE STORY』 のベルナルドを演じた時、 その役自身の心は私自身とそれほどかけ離れた役とは思っていなかったのに、
周囲からは大丈夫?、 と聞かれて、 私とベルナルドはかけ離れた存在に見られていることがわかりました。
壁にぶつかって乗り越えていく役づくりの過程はいつもと同じなのに、
なぜ大丈夫かと聞かれるのかなと考えた末、 ああ、 褒めていただいたときも有頂天になってはいけない、
自分を厳しく見つめる揺るぎのない目をもたなければと。 そうでないと、
いただいた御意見を生かしていくこともできないのではないかと思いました」
オスカルとアンドレを演じる彩輝直さんに、 再び大きな飛躍のときが来ている。
一人のスターの成長をつぶさに見れる楽しみ。 それが宝塚観劇の醍醐味だという人がいるが、
同感である。
インタビュアー
名取千里(なとり ちさと)
(ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局
/宝塚NPOセンター理事
主な編著書
「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)
「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)
「仕事も!結婚も!」(恒友出版) |
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