サーモンピンクを基調に初期のディオールのスタイル画があしらわれた表紙は、華やかでファッショナブル。この本が執筆されることになったきっかけは、徳永さんの知人で神戸大学学友会「一金会」の世話役をする川北正氏の要請で講演した「ファッションの歩み」。
「断片的な資料や専門的な服飾史はあっても、一般の人が気楽に読めるものは少ないので、講演の内容に加え自分が服飾に関わってきた個人的な歴史もちりばめ書いてみる気になった」と言う徳永さん。
ファッションの歴史は、壁画などでよく眼にするエジプトのロインクロス(腰巻状)から始まり、現代の洋服の起源となっている西ローマ帝国時代のロマネスクスタイル、近世の幕開け、ルネッサンスのイタリアスタイルからマリーアントワネットに象徴される贅を尽くしたフランセーズ、明治の日本に洋装が輸入されたバッスルスタイル、そして、服飾文化の蓄積が一気に花開いた戦後のパリモード、日本のデザイナーが東洋を意識して発表したアンチクチュールまで、詳しく紹介され、歴史の流れとファッションの関係性が語られている。また、徳永さんが呉服商に生まれ、洋裁学校を卒業後、一人で洋裁店を始め、子育てをしながらも経営セミナーに参加し、今の洋装店「INOUE」1号店・2号店にまでしたことなど自分史も興味深い。衣料業界が様変わりし既製品が量産され、流行に流される中、「もう少し長いスパンで物事を展望する必要があるのではないでしょうか。そんなことを考える一助になれば」と徳永さんはこの本に思いを込めた。 |