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-バックナンバー- 20006年7月号
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鉄斎美術館 鉄斎美術館 鉄斎美術館 鉄斎美術館

 若葉の緑が目にも鮮やかな皐月の清荒神清澄寺。境内にある鉄斎美術館から眺める新緑の甲山は一幅の絵のようで心が癒されます。美術館では5月10日から「鉄斎の器玩」展が開催され、鉄斎と親交のあった工芸家による木竹工芸や陶器などに鉄斎が絵付した作品が展示されています。陶芸家として丹波に窯を開き、茶器や花器を多く作られているピーター・ハーモンさんと器玩に触れ、文人鉄斎の遊び心溢れる作品を娯しみました。

ピーターハーモン

▲ピーター・ハーモン
1956年米・ネブラスカ州生れ。78年グレースランド大学美術科卒業。81年来日、85年滴翠美術館付属陶芸研究所専攻科卒業。88年篠山市に開窯。年1、2回個展を開く。日本伝統工芸展、日本陶芸展、田部美術館大賞「茶の湯の造形展」等入選、入賞多数。日本工芸会正会員


茶道の心「清風」は鉄斎芸術の原点。俗塵を払って生き、作品を生み出したその精神に少しでも近づきたい。

 私は、来日してから陶芸を本格的にやり直し、滴翠美術館の陶芸研究所で学んだ後、篠山市に開窯しました。滴翠美術館は茶道具のコレクションが多く、今、稽古を続けている茶道、藪内流の宗匠との出会いもその時です。展覧会では鉄斎が傾倒した煎茶に因んだ道具類が多く展示されていますが、煎茶も抹茶も元は一つで、本来その精神は同じだと思います。私は陶器を形と色だけで表現していて、鉄斎のように絵付はしないのですが、鉄斎が三十三歳の時に絵付したというぐい呑は蘭や竹など四君子が小さい杯の中に形よく描かれていて「あれでお酒を呑むと旨いだろうな」とつい思ってしまいました。

 鉄斎の作品は小さいものであっても画と同じインパクトを放っていますね。

 私自身、大きな作品を作ることに価値を見出していた時期もありますが、最近は小さい作品の中に、いかに自分の表現を凝縮させるか、その方向を探っています。大きさで見せられない分、作家の真の力が試されます。

 日本の煎茶道は禅宗の僧、高遊外(売茶翁)が確立したといわれ、その道具一式が「煎茶皆具」(写真左上・全期間展示)として展示されている中に、鉄斎自ら手作りしたという「清風」と書かれた旗があります。この言葉は鉄斎の生き方の原点じゃないでしょうか。俗塵をはらい、清々しい境地で画を描き、書をしたためた鉄斎の精神は茶道と共通するものです。私もそんな境地に近づき作陶できればと願っています。

 陶磁器のほか日本の伝統工芸である指物や鋳金なども素晴らしい。美術館からどんどん外に向けてアピールしてほしいものです。

円形茶壺


会期 〜7月2日(日)
月曜日休館
開館時間:午前10時〜午後4時30分(入館は4時まで)
入館料:一般300円、 高大生200円、 小中生100円
(老人、 身体障害者手帳提示の方は各々半額)
宝塚市米谷字清シ1 清荒神清澄寺山内 
TEL0797−84−9600
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