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-バックナンバー- 20006年5月号
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フェアリーインタビュー


その願いは今年11月、宙組宝塚大劇場公演『維新回天・竜馬伝!』―硬派・坂本竜馬III―で実現する。

十輝いりすさんは小3の時に初めて宝塚歌劇を観て以来、毎公演、家族で観劇するようになり、中学卒業と同時に宝塚音楽学校を受験した。だから東京の親元を離れて宝塚音楽学校の寮生活を始めたのは、15歳の時である。
「びっしりレッスンがあり、家が恋しい、寂しい、と感じるヒマなどありませんでした」
2年間、ひたすらレッスンに励んだ。
「1年上級生の初舞台が宙組発足のお披露目公演だったので、私も宙組に入りたいなと思うようになりました」

翌1999年4月、十輝いりすさんたち第85期生は、雪組公演『ノバ・ボサ・ノバ』で初舞台を踏んだ。1976年に芸術祭優秀賞を受賞した名作である。
「宝塚歌劇の歴史を彩るすばらしいショーで初舞台が踏めて幸せでした。また再演される機会があったら、今度はいろんな場面に出たいです」

初舞台生が出る場面は、口上と、ロケットと呼ばれるラインダンスのみ。新人公演も、たいていは1、2場面だけだが、『ノバ・ボサ・ノバ』の新人公演は全くちがった。
「ショーなのでみんなで出る場面が多く、いくつもの役をさせて頂きました。お衣装やカツラの早変わりが何度もあり、初めてのことばかりで、同期全員、てんてこ舞いしました。あれを乗り越えたから、その後、早変わりが怖くなくなったんですよね」

その年、宙組に配属になった十輝いりすさんは、「ダンスのここは、この先輩から盗もうとか、いろんな上級生の、いろんな部分を吸収しようとしてきました。それまでできなかったことが、いつのまにかできるようになるのが励みになります」

なによりも、毎日舞台に立つことで自分が鍛えられた。

思い出の舞台はまず、2003年8月の博多座公演『鳳凰伝』。盗賊のトンを演じた。
「それまでは台詞を言ったことがなかったのです。舞台経験を積めば積むほど、よけいな緊張がとれていく。そういうことがわかったのも、この頃でした」

2004年5月は大劇場公演『ファントム』の新人公演でフィリップ・ドウ・シャンドン伯爵を演じた。「あの演技が当時の私の精一杯でしたが、今ならもっとできると思います」

2005年1月『ホテル ステラマリス』の新人公演では海洋生物学者ティモシー役だった。
「お芝居は泣かせるよりも笑わせる方がむずかしいです。受けを狙っているなと分かると、観客は笑えなくなってしまう。ティモシーは本役さんの個性が利いた役で、私が真似をしても無理だと思ったので、人の真剣な様子を見ていると、何となくおかしい、という感じを目指しましたが、周りのみんなは『計算せずに、そのままやればいい』と。自分では普通のつもりでも、どこかおもしろいんだそうです」と、苦笑する。

同年8月『炎にくちづけを』のフェルランド役で新人公演を卒業した。

これからの目標をお聞きすると、
「こう表現したいと思っても、まだ表現しきれない部分があります。身長だけではなく、すべてにスケールの大きさがほしい。明るい場面が好きですが、悪役も、気障な大人の男もやってみたい。舞台の上は、お客様の目を感じられ、お客様の視線に育てていただけるから、大好きです」

フィナーレでのマタドールのダンス、そしてバウ主役。煌くスポットライトと熱い観客の視線を浴び、十輝いりすさんはさらに輝きを増していく。

ビョルン役を演じる十輝いりすさん



※次号のフェアリーインタビューは、 月組の大空祐飛さんの予定です。

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インタビュアー  名取千里(なとり ちさと)  
(ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局 /宝塚NPOセンター理事

主な編著書   
「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)   
「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)  
「仕事も!結婚も!」(恒友出版)


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