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-バックナンバー- 2006年4月号 |
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ニューヨークで大作表現に興味を持つ 2月初旬、私は宝塚の平井山荘にある洋画家・野崎さんの油絵具の匂いが漂うアトリエを訪ねた。アトリエには、モチーフである女性像の具象作品が、所狭しと壁面に掛けられていた。 「美術部に入るなら絶対に辞めるな、と顧問にいわれました」笑顔で話す野崎さん。出身地・唐津の小学校では絵画コンクール展によく入選していたことや中学校の美術部顧問の先生にバルビゾン派のコローのポスターを見せられたのが、絵画により深い関心と興味を寄せる契機になったとのこと。 大阪芸術大学では、二科会の重鎮、松井正氏に師事。卒業後、ニューヨークで最先端の美術表現に刺激を受け、大作表現に興味を持つ。帰国後は知人の紹介で佐賀県有田で磁彩壁画制作を独立美術協会の森通氏に学んでいる。その後デザイン専門学校でデッサンを教え、現在は高校や大学でも多くの後進の指導に当る傍ら、画業の研鑽を積む。 日本の女性像に見る東洋の美 1995年の阪神・淡路大震災後に現在の平井山荘にアトリエを西宮から移し、女性像の人型を今も追及している。「日本の若い女性像に魅せられるのは、女性の凛とした姿勢に、東洋の美が見出されるからです」と制作意図を熱く語る。 さて、新作「こんにちは」(図版)に描かれている女性のさりげない仕草にも、現代に生きる若者の生命感が実にうまく捕らえられている。野崎さん描く女性像からは、表面的になぞり写し取るのではなく、誠実な写実の長い蓄積により、正確で力強い画家の凝視力が窺える。 また、野崎さんの多くの作品に青色が目立つのは、青が精神を象徴する色だからだそうである。さらに、特定のモデルを数年間描き続けるのは、「生命力の変化と重層した時間が描ける」と説明する。この言葉に、私は的確なデッサンを基本として磨きあげてきた独自の写実表現に拘る作家姿勢を垣間見た。 |
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