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私は30年ほど前からパステル画を描いていますが、 学生時代は、 工芸科の染織図案専攻で、 当時の実技授業は2年間、 毛筆画が中心でした。 京都を代表する小合友之助、 稲垣稔二郎先生に師事し、 工芸を芸術として位置づけられた富本憲吉先生とともに授業の中で折々に鉄斎作品が話題にのぼりました。 その鉄斎の作品を一堂に集めた美術館が宝塚にあるというのは幸せですね。 ほぼ年間を通して観たいときに鑑賞できるんですから。 作品は美しく保存され、 加筆もなく、 後世に伝えられていくのは意義あることです。 新春名品展を鑑賞しておもったのは鉄斎には珍しい大和絵風な 「楠妣庵図」 (前期展示) にも象徴されているように、 鉄斎の心象風景と言うか、 実際にはありえない形の山、 近景との位置関係をみると下絵を描かずに筆を走らせながら構図を完成させていったのがわかります。 技術的な基礎、 確たるテーマがあるからこそ描ける風景なんですね。 画風の変遷の中で鉄斎作品に対する評価はさまざまだとおもいますが、 私は最晩年が絶好調のようにおもいます。 意のままに動く筆は鉄斎の心が人間界から離れて、 天空に向かっているようです。 89歳の作品 「松芝不老図」 (前期展示) などの自由奔放な力強い線は、 無の心境で描いているのではないでしょうか。 ある高齢の作家が 「作品はあなたにとって何ですか」 と問われ 「祈り」 と言われた。 鉄斎にとっても作品は人間界で成就できないことへの表現、 即ち精神世界の表現だったといえるのでは…。 この展覧会では、 桐板の四曲屏風に直に描いたという珍しい作品 「四君子図」 (上の写真、 みやざきさんの後ろ・前期展示) や面白い器玩類にも触れることができ楽しめました。 今後は鉄斎の作品と他の作家の方のコラボレーションなどもあれば嬉しいですね。 |
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