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-バックナンバー- 2006年2月号
宝塚アート見聞記

2006年からの新シリーズとして伊丹市立美術館の学芸員・坂上義太郎氏の解説による「宝塚アート見聞記」をお届けします。アーティスト、展覧会、オブジェなど宝塚のアートシーンを「鉄斎美術館を訪ねて」とともにお楽しみください。
今村輝久・作(1993年) 明日へのコンセプト
明日へのコンセプト
今村輝久(1918〜2004)は大阪で江戸宝永年間からつづいていた鋳物屋で生まれた。東京美術学校彫刻科で彫刻を学び、軍隊生活を経て、終戦後、具象彫刻を制作していた。1956年頃ブランクーシに魅せられ、半具象的形態から非形象的形態に移行している。

 また今村は、早くから野外彫刻の必要性を唱え、大阪南港ポートタウン彫刻計画などに参加したり、作品も各地に設置されている。

 さて、阪急宝塚駅前広場のモニュメント「明日へのコンセプト」は、作家自ら作品(アルミニューム)の表面を研磨するという手仕事を大切にしている姿勢が窺える作品のひとつである。今村は、形態の単純化と研磨に腐心し、絶対的な形を創造している。

 本作品は寡黙で、声高にはメッセージを発してはいない。私たちは、作品の前に立ち、静かに耳を傾ければ、低く流れている調べが、やがて力強く響いてくるのに気付くだろう。このモニュメントが、周囲の空間を気使い、端然としている姿に、私はしばし時を忘れた。


アルマン作(1989年)クレッシェンド
クレッシェンド
昨年の何月か失念したが、フランス出身のアメリカの画家、彫刻家アルマン(1928〜2005)が亡くなった。廃物を箱に詰め込んだり、同じ種類の物体を幾つも並べてプラスティックの液で固めた「集積」や「充満」のシリーズで知られている。このような作品は、アサンブラージュと呼ばれている。

 阪神・淡路大震災のあった1995年、JR宝塚駅と阪急宝塚駅の間に、「クレッシェンド」が設置された。言わずもがな「クレッシェンド」は、楽譜で段々強く演奏・発声せよの意味である。図版のように縦長の矩形の彫刻作品の表面には、無数の色んな弦楽器と管楽器が集積されている。

「クレッシェンド」は、私たちの認識と対立するように屹立し、醒めた無関心が作り出す奇妙な詩的リズムが漂っている。震災の年に設置されたこともあり、地震により大きな被害を受けた構造物の被災後の姿を想起させる。何れにしても複雑な思いを抱かせる。
伊丹市立美術館学芸員 坂上義太郎
伊丹市立美術館
◆グランド・ツアー 美的観光のすすめ(油彩・水彩・版画)
画家たちが、彼の地を目前にして描いた作品、実際には訪れずとも彼の地に憧れを馳せて描いた作品。さまざまなかたちで旅をイメージさせる作品たちを、「旅への誘い」「名所の風光」「旅のかたち」「空想の旅」などをキーワードに構成。
〜3/19(日)
入館料 一般700円 大学・高校生350円
    小中学生100円
●AM10:00〜PM6:00(入館は30分前迄)月曜(祝日にあたるときその翌日)・2/6(月)〜10(金)は展示入替のため休館
http://www.artmuseum-itami.jp


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